第442話 全てはクロサガ王国のために⑦
こうして私は大要塞マムルークを首尾よく通過した。いや、厄介者として放り出されたといった感じか。
次にプレスビテリアン帝国側から本当に入城できるかどうかも怪しい。まあ、その時はその時だ。
大要塞マムルークを通過すれば即、プレスビテリアン帝国の領土という訳でもない。ここから道なりに30分ほど歩くと広大な山々が見えてくる。
その山々の頂上がクロサガ王国とプレスビテリアン帝国の国境線らしい。
まあ、私の場合は【黄金気】の全力展開で3分ほどで入山できる。思ったより時間も食った。急ごう。
大要塞マムルークからは次々と荷馬車が出てくる。皆、肩を揉んだりして一仕事終えたような表情をしている。出てきたそばから要塞の側にキャンプを張り、野営の準備をしている。
よく見れば城壁の側にはそこかしこに荷馬車が止まっており、野営の準備が始まっている。
今から入山すれば日が暮れる。治安も良く、水場もあるこの大要塞マムルークの付近で夜を明かすのだろう。
彼らにすれば便利だろうがこんな要塞の側で身元不明者の宿泊を許しテロ攻撃なんかには合わないのだろうか?
まあコチラの世界のこの階層の人間にはテロ攻撃の概念が無いのかもしれないが。
もしくはテロ攻撃の概念があっても極めて卑劣な行為と見なされ採用されていないのかもしれない。
あらゆる世界はその世界での独自ルールが採用され上手く調和が取れている。部外者がでしゃばるものではない。
まして他国にテロ攻撃を行おうとしている私がする心配ではないか…
妙な感傷は捨て【黄金気】を纏い爆走する。モンスターもおらず、障害物もないので非常に楽だ。
山の麓まで来ただろうか、やたら足の遅いお婆さんに会う。見るからに足を怪我している。
怪しい。
怪しすぎる。
絶対何かのイベントフラグだ。
平時なら迷わず助けるが今は時間がない。話を聞いては情も湧く。ココは完全にスルーし今度、来た時にでもまだいたら助けよう。
一応、回復用のポーションだけはすれ違い様にそっと置く。
このまま、『担いで山頂まで登頂せよ』や、『大要塞マムルークに送り届けよ』なんてイベントだったら面倒だ。仕方がない。
そう自分の心に言い訳して先を急ぐ。
おかげであっという間に山の8合目だ。
眼下に広がる景色を楽しむ時間も惜しみ、先を急いだ結果だ。非常にサクサク進んでいる。
自分の選択に満足したことで一瞬の隙があったのだろうか。
それとも単調な景色の移り変わりに飽き、周囲の警戒を疎かにしていたせいだろうか。
いつの間にやら私に並走している人影があった!?
ココまで接近されながら見落しただと!?
そして、私の走りについてこれるだと!?
いつの間にか後ろにも!? いや前後左右全てだ。
振りきろうとしたが振りきれない。おまけに袋小路に誘いこまれた。
「へっへっへっ、姉ちゃん。有り金を全部置いていきな~」
目の前の男が曲刀を見せびらかしながら脅迫してくる。
正直、曲刀ぐらいでは全く威嚇にならないが私の動きに追いてこられる実力のほうは侮れない。
「普段は帝国の奴らをカモにしているが、足をケガした婆ちゃんを見捨てるような卑劣漢なら心も痛まね~」
ぐぐっ…お婆ちゃんを助けてもイベントが発生し、助けなかったら別のイベントに巻き込まれる強制イベントだったのか…
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