第440話 全てはクロサガ王国のために⑤
とりあえず、目下の障害は目の前の3人の兵士。そして、後方の5人だ。後方の5人のさらに奥に大きな門が見える。おそらくあれがプレスビテリアン帝国へと続く門だろう。
どの兵士も緊張感が無く、談笑している。まだ、私の詮議が始まっていないので気を抜いているのだろう。
その①【黄金気】の全力展開で門に接敵。
その②【黄金烈眞掌】で門を破壊。
その③【黄金気】の全力疾走で一気に後続を引き離す。
プランはできた…
やるか…
「どうぞ。コチラに来て下さい」
紳士的な態度で兵士が誘導してくる。
上手くタイミングを逸らされた。心の中ではもう関所破りのプランが固まっていたのに。
左隣にいた若い兵士が石版を私の方に向ける。結局、腹案もないまま、詮議を受けるはめになってしまった。
8対1。しかも対処に手間取れば次々と応援が出てくる。首尾良く突破できてもココで時間をかければ、すぐに追っ手がかかる。
千載一遇のチャンスだった。
心の中でそう地団駄を踏んでいたら予想外の答えが帰ってきた。
「どうぞ。お通り下さい」
関所破りも選択肢に入れ、決死の覚悟を固めていたのに肩透かしを食らう。
進むことを諦めた冒険者も唖然として私の方を見ている。彼には気の毒だが今は自分の身が最優先だ。
若い兵士はこの先の地図を簡単に説明してくれる。道を譲り、いつでも行っていい状態だ。
気が変わらないうちに行かせてもらおう。
そう思い。広場を進む。
「女、少し待つでござる」
年嵩の立派なヒゲをはやした兵士が私を呼び止める。
「おい、新人。【審理の石版】を俺にも見せでござる。手形を持たずにココを通れるのは高級軍人か密偵ぐらいな者でござる。そんな人間は半年に一度くらいしか現れんでござる。間違いではござらぬか?」
年嵩の兵士も詮議に納得がいってないのだろう。若い兵士が持っている石版の確認に向かう。
どうする!? 道が開いている今、強行突入するべきか?? 何もしなくても石版はOKを出したのだ。このまま疑いが晴れるのを待つか???
「ええっ~そんなことないっすよ~ほら、ちゃんと『通行許可』って出てるっしょ~」
「どれどれ…本当でござる…そんなはずはないのでござるが…えっと、職業は…げぇ~ダーダネルス・ガリポリ領主!? コイツが春日井領主でござるか!!!」
年嵩の兵士が大声で私の正体をばらす。個人情報をベラベラしゃべりやがって!
周囲の兵士の反応は様々だ。無能者。剣王姫の友人。黒佐賀に取り行って領主になった毒婦。全く統治をしない領主。ガリポリ領だけのエコヒイキ。
やはり、否定的な反応が多い。当然か。
「おい誰か司令官を呼んでくるでござる。ノコノコとこんな時期に…何を企んでいるか分かったものではござらぬぞ」
年嵩の兵士の反応が私にとって最も厳しいものだった。
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