第439話 全てはクロサガ王国のために④
ディズレーリと別れた私は転移で一気にダーダネルス領に跳んだ。よく考えれば自分の領地なのに一度も行ったことのない場所だ。転移できないかと思ったがアクィナスが転移アイテムの設定を調節してくれていたようだ。全てが終わった後に礼を言いに行こう。
そういえば、これが私に取っての悲願のダーダネルス領入りだ。以前は行こう行こうと思っていても常に邪魔が入り、ついぞ辿り着けなかった場所である。
誰とも接触を持たなければこうも簡単に辿り着ける場所だったのか…
向こうに見えるのがダーダネルス領主館か…最接近領の領主なら、なにか情報を持っているかもしれない。少しだけカンザスの傲慢な面を拝みに行くべきだという欲望が湧き出してくる。しかし、今は無視だ。時間がない。
ココから先は徒歩での移動だ。急がなくては。
【黄金気】を纏い全速力で走る。
馬車をも抜き去る速度で道なりに1時間程走っただろうか、巨大な建物が見えてくる。あれが大要塞マムルークだろう。
そう思ってしばらく走ると行列に出くわす。なるほど、関所改めか。
幸い、馬車と旅人で仕分けされている。
私は好奇な視線にさらされつつ旅人の列の最後尾に並ぶ。
旅人の列はそれほど待たされることなく、ブロックごとに入城を許された。馬車などは荷物検査などもしているのだろう。X線もなく自力での検査を行なうので時間がかかるのだろう。
要塞の中に入るとさらに手形を持っている者と持ってない者に仕分けをされた。
なかなか機能的な作りだ。
手形を持っていない者は圧倒的に少なく、私ともう一人の冒険者の2人だけだった。
そして、すぐ出国のための詮議が始まった。まずは先にいた冒険者からだった。目の前の兵士が石版のようなものを持って詮議を進める。おそらくあの石版に【鑑定】のスキルでも宿っているのだろう。
目の前の冒険者は名前とプレスビテリアン帝国への入城の目的を聞かれ、スラスラ答えている。
プレイヤーかNPCか判断がつかないがどうやらお使いクエストの真っ最中のようだ。
しかし、あれだけ素直に答えていたのに最後に有無を言わさぬ回答が帰ってきた。
「現在、我が国はプレスビテリアン帝国と準戦闘状態にある。手形を持たぬ人間の往来は許可できぬ。クロサガ王国からの出国は許可するが出国したら最後、二度とクロサガ王国には戻ってこれぬ。それでもよいか?」
ぬぬぬっ…スパイ防止措置だと思うが凄い条件だ。クロサガ王国へは【気】の扱いを学ぶために留学する者も多いと聞く。この内容はかなり酷だ。
【気】の扱いは奥が深く、学んでも学んでも底が見えない。よって、半永久的にクロサガ王国に入り浸り修練に努めるのが普通だ。この条件だと【気】の【スキル取得】を諦めろと言っているようなものだ。
現に目の前の冒険者も諦めて引き返す道を選択した。条件がキツすぎるのだ。明らかに気落ちして帰っていく。
何か簡単に手形を手に入れる方法みたいなものはないのかな…
そんなことを考えていたら次に私が呼ばれた。
まずいな…念のためディズレーリからもらった【赫のリストバンド】を装備しておく。手形じゃないのに効果はあるのか?
詮議に参加している兵士は正面に3人。その後方に5名。しかし、周囲から兵士の訓練の声も聞こえる。これは関所破りなんかしたらワラワラ兵士が群がってくるパターンだな…
どうしたものか…
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