第438話 全てはクロサガ王国のために③
「愚かな女だな、春日井。そんなことをしても今更、堕ちた名声は元には戻らんぞ…」
「正直に言えばそんなものには興味はないよ。ただ、与えられた役目を果たす。いや、期待されてる人間の期待に応える。そのために成すべきことを成す。それだけかな…」
もう一度、言葉にして自分が動く訳を思い返す。私が動く訳は嘗て私を信頼してくれていた人達、今でも私を信頼してくれている人達、それらの人々の負託に応えるためだ。
「ソコまでの発言ができるなら、どうしてもっとちゃんと働かなかったんだ…」
呆れたような声音でディズレーリは愚痴ってくる。
「全て身から出たサビだよ。頑張ってなんとかなるならとうの昔からやってた。技術的不可能と努力する方向性の間違い。コミニケーションの不足、事前知識の不足、信頼の不足、時間の不足、全部含めて私の能力不足が招いた結果だ。後悔も未練も失敗もあるけど、私が頑張ったことを私は否定しないよ。誰の評価ももらえないけどね」
「…」
「まあ、重要施設に関しては現地で考えてみるよ。また、情報を仕入れたら会いに来るから。じゃあね」
それだけ告げるとさっそく、プレスビテリアン帝国に向かって歩きだす。行ったことのない場所だ。転移アイテムも無い。よってダーダネルス領からは徒歩での移動だ。急がなくては。
「待て、春日井。プレスビテリアン帝国への道は陸路だろう。現在、大要塞マムルークは厳戒体制を取っている。手ぶらで行ってもマムルークの関所を通過することはできん。コレを持っていけ。領主だから素通りできる可能性もあるが念のためだ。マムルークの司令官は俺の友だ。コイツを見せれば少しは便宜を図ってくれるだろう」
私が怪訝な顔をしているとディズレーリは赤い布切れのようなものを投げ渡してきた。【聖竜皇の竜眼】で確認すると【赫のリストバンド】と表示がされる。とてもリストバンドの形状を保っておらず、とても汚い。しかも腕に巻くには長すぎる。多分、地べたに付くぞコレ…
「大要塞マムルーク近辺では嘗て王都で猛威を振るった盗賊団【フォリー・フィリクション・フロック】の出現が確認されている。用心しろよ。それと、攻める候補を施設だけでなく、人物もいれておけ、皇帝を倒せばこの戦争は終わるぞ」
ディズレーリの提案はまるきり暗殺そのものだったが毒は無かった。【赫のリストバンド】の件といい、悪気は無いのだろう。コレはもしかして死出の旅路だと思われているのだろうか。
だとすれば、彼の鼻を明かすためにも一層頑張らなくては。生きて再び王都の土を踏む。そう決心して私はプレスビテリアン帝国に向かった。
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