第437話 全てはクロサガ王国のために②
「貴様、まさかこのクロサガ王国を売ろうというつもりか…」
急激にディズレーリの【気】が膨れ上がってくる。なんとも攻撃的な【気】だ。まるで今にも私の首を刎ねんとする勢いだ。この男はこの男なりにクロサガ王国を愛しているのだろう。
だがいつまでも見当違いの威嚇を受けるのもシンドイ。さっさと誤解を解いておこう。
「違うよ。一国において戦争継続をも困難にする中枢部分はどこだろうって話さ。それが分かれば守ることも攻めることもできるでしょう」
私はわざと『攻める』に強いアクセントを乗せて伝える。
「まさか単身乗り込む気か、プレスビテリアン帝国に!!!」
私は肩をすくめ、イエスとのノーとも取れる身振りをする。
「テメエ領主だろう! テメエが行く気なのか!?」
驚いたことにディズレーリはまだ、私を領主と認めてくれていたようだ。まあ、罷免されたわけではないからシステム的に逆らえないだけかもしれないが。
そのせいか荒い言葉使いとは裏腹に私に対して理詰めで説得してきた。
「敵は侵略に侵略を重ね現在の姿を形作った大帝国だぞ。国力だけで言えば我が国の10倍はある。当然、常備軍は十数万。よって重点施設には至るところに監視の兵が立っており警備は厳重そのものだ。とても1人では突破できんぞ…」
「まあ、どんな固い装甲でも聖竜皇や神亀の強度よりは弱いでしょう」
「…」
「待ってても殺られるだけだからね。それならこちらから攻めて撹乱させてやれば、少しは帝国にダメージを与えることができるかもしれない。壊滅的ダメージなら、尚のこと良し。防衛に重点を置きクロサガへの侵攻を想いとどまってくれるかもしれない」
自分で言ってても胡散臭い話だ。それでも残る有効な手立てはこのぐらいしか思いつかない。
何も行わずただ決戦の日を迎えるより、少しでも勝利のための確率を上げておきたい。どうせ、クロサガ王国の兵力に私はカウントされていないのだ。
「まあ、希望的観測だけどね」
私はなるべくゆっくりと穏やかに言う。卑屈にならず、晴れ晴れとした表情を意識しているがちゃんとできているだろうか。
「…しかし、事が露見すれば宣戦布告の口実にされてしまうかもしれない…万が一捕虜になれば…」
「このまま待ってても適当に口実を作って宣戦布告はやってくるよ。捕虜になったら潔く死ぬから問題はないよ…」
もっとも私の場合はNPCとは違って本物の命までは奪われない。ただ、デスペナルティを払ってホームポイントに戻るだけだ。彼らほどかけるレートは高くない。
だから、そこまで感極まった顔をされても困るのだが…
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