第431話 我孫子陣営の中に潜り込め⑮
都洲河はリヒャルトシュトラウスとの戦闘の後、真っ直ぐ会合場所に向かった。
私は労なく都洲河の尾行に成功した。やはり、派手な一戦をやらかした後でもう刺客はいないと都洲河の気が緩んだのか。
あるいは全身が欠損するほどの大ダメージを受けていたので私の尾行を知覚していなかったのかもしれない。
いずれにせよ、尾行の結果、我孫子との会合場所に無事、辿り着くことができた。
リヒャルトシュトラウスが文字通り、命をかけてこの機会を作ってくれた。絶対に無駄にするわけにはいかない。
会合場所はただの教室であった。プレートには『生徒会室』とある。教室の外見は何の変哲もなかった。しかし、中に入るとその光景は一変した。
高級ホテルのスイートルームのような豪華さだ。広々とした室内に大きな円形のテーブルが設置してあり、既に3人の人間が席についていた。内2人は知らない顔だ。
1対1の会合を予想していたが4人での会合か…この中に探知系の【スキル】を持ったプレイヤーがいたら逃げ切れない。どうしたものか…
「遅いぞ、都洲河! 【魔王】が遅参とは何事だ」
最初に我孫子の叱責が飛ぶ。やはり、俺様体質なだけあって待たされるのが嫌いなのだろう。いや、待つことより、他人に待たされるという事実が嫌いなだけか…
「いや、それよりも都洲河さんの全身ダメージの方が重要でしょう。どんなのと戦ったんすか?」
我孫子の右隣にいた角刈りの男が興味深げに尋ねる。
「ウチのスタッフと少しケンカをしてしまってな…おかげでこの様だよ」
ボロボロになった八束学園の制服をつまみ都洲河は肩をすくめる。
「都洲河さんをソコまでボコれるって相当なハイランカーじゃないっすか! 今度、自分とも殺らせて下さいよ」
「断るのだよ。相手は女の子だ。それでも阿来津より強い。まずはステゴロで俺に勝ってから挑むのだよ」
都洲河が阿来津の申し出をキッパリと拒否すると、それ以上は突っ込んでこなかった。どうも都洲河を怖れているらしい。
「それでも身体に欠損まであるのはよくないですね…治しましょうか?」
我孫子の左隣にいた中性的な男性が治療を提案する。もの静かな感じでとても我孫子グループの人間には思えない。このメンバーの中ではとても異質な雰囲気を出している。
「いや。雨佐美。放っておけば治る。随分と待たせてしまったのだよ。早く始めよう」
「全く会合前に余計な戦闘などしおって、貴様の戦闘狂ぶりにも困ったものだな。床が血で汚れるではないか」
「まあまあ、我孫子。正しさを理由に誰か責めてはその正しさも無価値となる。あまり都洲河をイジメるな。彼もお前のカワイイ後輩なのだから」
我孫子を宥めたのはもちろん【副会長】の甲斐田だった。
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