第430話 我孫子陣営の中に潜り込め⑭
「ふふっ…そうでなくてはな…魔王の部下は魔王の命を脅かす存在でなければな…」
爆炎の中から都洲河が現れる。【高速修復】が追いついていない。一目で甚大なダメージを追っているのが分かる。
しかし、その目は全く死んでいない。劣勢であってもまだまだ、戦闘意欲は十分だ。
「さて、死に近いダメージを受けたからな…これでようやくあの技が出せるのだよ…」
そう呟くと後方に大きく距離を取り、助走をつけ重装甲騎士に向かい爆速してきた。
「六天白克魔生滅」
そう叫ぶと都洲河の拳は白く輝く。重装騎士の顔面に白く輝く拳をぶち込むとそれだけで重装騎士は動きを止めた。
続けてリヒャルトシュトラウスを守護していた【雷精】を破壊していく。これまでとはうって変わり白光の拳に触れるだけで【雷精】が消滅していくのだ。
「この技はプレイヤーを除いた全ての意思ある生物の生命核にダイレクトダメージを与える。【無論】、精霊といえども例外ではない」
あっという間にリヒャルトシュトラウスを守護していた【雷精】が全て消滅してしまった。
意思を持った現象であるところの【精霊】にこんな方法でダメージを与えるとは…
流石のリヒャルトシュトラウスも予想していなかったらしく、何もできず呆然と立ちすくんでいた。
「やはり、【雷豪力の鎧】に憑依していた【雷精】は別格か…【六天白克魔生滅】でも仕留めきれないとは、【名付き】か【雷精王】か…」
全ての【雷精】が消失した中、【雷豪力の鎧】は弱々しくもまだ、リヒャルトシュトラウスを守ろうとしていた。
「しかし、最強の盾は砕いた。大人しく下るのだよ、リヒャルトシュトラウス」
都洲河はリヒャルトシュトラウスに最後通牒を突きつける。断れば確実にPKされる剣幕だ。
「まだ、私には6小節の雷滅魔法が残っている。負けたわけではない」
しかし、リヒャルトシュトラウスは怯まない。さらなる挑発を伴って都洲河を見る。
「しかし、6小節の雷滅魔法はまだ未完と聞いている。詠唱時間も当然、5小節よりもさらに長いのだろう。それだけの時間があればお前の細首を落とすことなど訳がないのだよ」
「お前も満身創痍だ。もう数撃入れればお前も落ちる。私がまだ、出してない切り札を使うとは考えないのか?」
「その時はさらなる奥の手を使ってPKするまでなのだよ」
そこで都洲河の表情は僅かに緩んだ。敵を見る目からスタッフを見る目へと変わった。
「それにまた2週間、MPゼロは避けたいだろう。もちろん2週間、君を守ることに異論は無い。しかし、その間、ずっと戦闘ができないのもストレスが貯まるというものだろう」
「そうだな…目的は達した。【雷豪力の鎧】だけでなく【雷精ボルタ】まで壊されたら収支は完全にマイナスだ。ここは再び【魔王】様に忠誠を誓うとするか…」
まさか、都洲河に弓を引いて再び働けるとは思っていなかったらしく、リヒャルトシュトラウスは完全に毒気を抜かれてしまったようである。無条件降伏を受け入れた。
「ふっふっふっ…どうやら、混乱は解けたようだな。また、俺に勝つ策を閃いたらいつでも挑むがいい。スケジュールに折り合いさえつけば、いつでも君の挑戦を受けよう」
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿もなんとか頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチっとが私の創作の『飯食った後、数時間後は思考が回らない。鬼門だということがようやく分かった』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。