第429話 我孫子陣営の中に潜り込め⑬
近接戦闘を行えば、【雷精】の襲撃に会う。
かといって遠距離攻撃の間合いはリヒャルトシュトラウスの独壇場だ。しかも、リヒャルトシュトラウスは既に大規模詠唱を始めている。このまま、攻めあぐねていては飽和攻撃を喰らい都洲河の方がPKされてしまう。
そのせいで攻めきれない。都洲河の動きにはハッキリと迷いがあった。
よく考えればこのまま都洲河が負ければ非常にまずい。都洲河のホームポイントがどこにあるかは知らないが我孫子との会合に参加できないからだ。
都洲河は結局、近接攻撃を選択したようだ。重装甲騎士が都洲河の歩みを止める。
【魔王】の砲弾のような拳が右胸を貫通する。しかし、重装甲騎士は意にも介せずそのまま、密着しゼロ距離で雷撃を食らわす。
重装甲はあくまで表皮だ。本体である無数の【雷精】にダメージを与えていないのだ。
重装甲騎士に羽交い締めにされ、なんとか脱出しようとするができない。重装甲騎士は圧倒的な腕力で拘束しているからだ。
「その鎧は【雷豪力の鎧】だ。雷撃を【筋力】へと変換できる。いくら【魔王】の【筋力】でも【雷精】の【エネルギー変換】には勝てまい」
流石はリヒャルトシュトラウスが対前衛戦闘の切り札とするだけのことはある。
ただの鎧に【雷精】を憑依させても【筋力】はたかが知れてる。
【雷精】の【電撃】を【筋力】に変えることができるならハイランカーと遜色のない力比べができる。
【雷精憑依】の特性を最大限活かす布陣を取っている。
その証拠に都洲河は防戦一方だ。有効打を一撃も撃てていない。
なんとか重装甲騎士の拘束を解いた都洲河は再び距離を取り、回復に努めている。
「ここまでやるとはな…四天王をやめて五魔将にしてもいいな、さしずめ【雷魔将】といったところか…」
全身、ススだらけ、各所から煙を上げながらも都洲河の表情に憂いはない。自分の部下の完成度に喜んでいる節すらある。
「減らず口はそこまでだ! 詠唱は完成した。何の抵抗もできずこのまま死んでいけ!」
そんな都洲河の様子に苛立ったリヒャルトシュトラウスが必殺の一撃をついに完成させた。
「ル・ラル・ケルベリオ・ヴァイノ・ザムグンド!!!」
リヒャルトシュトラウスの手から発せられた膨大な量の稲妻が魔王を襲う。持続時間こそ短いが聖竜皇にダメージを与えた稲妻と全く変わらない威力だ。
5小節の魔法に止めているらしくリヒャルトシュトラウスの両腕も炭化することなく残っている。
「はっはっはっはっはっはっ。これで【魔王】の栄光を我が手に!」
っておい!? 私のために戦ってくれてたんじゃないのか?
リヒャルトシュトラウスの後方で観戦してたから大丈夫だったが都洲河と同じ方向に立っていたら私も死んでたぞ…
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