第427話 我孫子陣営の中に潜り込め⑪
【隔離天上の薄布】を装備したままでは戦えない。解除して戦うか!?
いや、そもそも戦っても意味が無い。たとえ勝てたとしても都洲河を敵にしては我孫子陣営から情報を引き出すという最終目的から遠ざかってしまう。
ならば、この場は逃げるか!?
いや、そもそも【魔王】から逃げることなんてできるのか!?
逡巡が身体を硬直させる。
「出てこなければ辺り一面焼き尽くすのみなのだよ」
やむを得ない。一か八かトークで誤魔化すか。
私が【隠蔽】を解こうとした瞬間、誰かに肩をポンと叩かれる。
そして、私のすぐ側から新たな人影が現れた。
リヒャルトシュトラウスだ。
「リヒャルトシュトラウス、何の真似なのだよ」
怒気を含んだ声で都洲河は尋ねる。
「いやなに、ようやく魔力が戻ったからな。そろそろ、接客だけでなくプレイヤーとしての力も見せておこうと思って尾行したわけだよ」
「意味の分からんことを…狙う相手も間違っていれば実行のための時と場所も間違っているのだよ。手合わせがしたいなら相応の方法と手順があるだろう。それが分からぬお前ではあるまい。こんな闇討ちのような真似をしてはお前の格が落ちるだけだ」
「後衛の私が【魔王】から一本取るにはこういう手段しか思いつかなったのさ。正面から挑んでもあっさりやられるだけだろう? それにこういうのは私の趣味だ。【スタッフ】としての私の【接客】は見ただろうが【プレイヤー】としての私の戦闘方法を見たわけではあるまい」
「後衛が暗殺者の真似事をするなど才能の無駄だ。いよいよ持って意味が分からん…」
「時に意味の分からんことをするのもまた、人間だよ。理詰めだけで物事が進むならこんなところにはいないさ」
リヒャルトシュトラウスは艶然と微笑む。
「なんにせよ、2週間ぶりに魔力が戻って高揚してるんだ。付き合ってくれよ、都洲河。それとも【魔王】の名を持つものが【聖女】の挑戦から逃げるのかい?」
リヒャルトシュトラウスはさらなる挑発を繰り返す。どうあってもここで戦闘を行なう気だ。私の存在を隠すために! 会合の情報、尾行のための【アイテム】、都洲河の動向まで教えてくれたのにまだ、心配で追ってきてくれたのか。
「完全に正気の行動とは思えん。後衛が前衛に正面から一対一を挑んでも勝負にならない。それを自覚して、尚、挑むという…冷静に狂ってる。誰かに【操作】されてるのか? 俺は【状態異常解除】なんて持っていない。Pkして正気に戻すのだよ」
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