第42話 ワガママで可愛くて比較文化論が大好きなNPCです
「エミリーは朝なにか食べた? 昼にはまだ早いけどなにか食べに行こうか」
「ええっ、よろしいですわね」
ご飯を食べながらエミリーの希望を聞こう。そう思って提案してみたら彼女は快諾してくれた。
「石の道路に石の建築物、石の馬車、ここはまるで石の国ですね。エクシード王国は城こそ石でできていますが、一般庶民の建物は木でできたものが多いです。石で作るほうが耐久力は大きいですが加工も大変で労力も大きいはずです。なぜでしょう? 魔物の進行が多いのですか?」
「いや、魔物の侵攻なんてのは見たことないよ。なんでかな、地震が多いからと石を運ぶのにそれほどの労力が必要では無いからかな」
「なるほど、あの石の馬車を使っているから労力が少ないと。確かに労力がそれほど必要でないなら耐久力の高い石を使うのは道理ですね。ではあの馬車は動力はなんですか? 魔法力ではすぐに枯渇してしまうと思うのですか」
「電気とか固形燃料かな。うまく説明できないけど魔法力ではなく自然物を使っているのかな。みんなで分業してるからよく分らないよ」
私はもうめんどくさくなって適当に答えた。
「自然物ですか。確かに魔法使いに頼らないエネルギー出力機関は重要ですね。魔法使いというのは一般人では起こせない奇跡を具現化させる一方でそれを鼻にかける傾向があります。わたくしも聖の魔法を修得しようとしたとき、まずは基本となる火水風土の修得だ。それを修得しなければ教えないと傲慢な態度を受けました。目的の魔法だけを学びたかったのに、効率の悪い。なるほど高度に分業すればこのような社会を作ることもできるのですか。そして、それらの現象が集まって文化となるというわけですね」
エミリーは私の適当な回答にやたら納得して自分の疑問の答えに自分で応えている。やはりお姫様だけあって頭のいいキャラクターなのだろうか。
「しかし、興味深いですね。わが国は人族が多いから文化が単一的だと思っていたのですがこの国もやはり人口の過半数は人族のようです。だとしたら、文化の違いとは何に由来しているのでしょうか? 大陸の違いなのでしょうか、気候、風土の違いなのかしら…」
そして自分で問いの答えにたどり着いたらまた別の疑問を投げかける。
私も外国に行ったらこんな感じなるのだろうか。
「唯一、特徴的な違いは人族の子供の数でしょうか。出生率がも違うのでしょうか。子供の姿がまるで見えませんね。何かが欠けているようでさびしいものです」
痛いところを突かれた。セカンドワールドオンラインの第一階層は現実世界のあらゆるものをコピーしているが唯一、人間だけはコピーしていない。
ログインして自由に動き回れるのが高校からだから当然、子供の数は少ないのだ。
唯一、街中で動き回っている子供は全てNPCの子供だ。
「ところで、あのおそろいの服は騎士団かなにかですの?」
よく見れば我ら福天高校の制服を着た一団が歩いている。振替休日なのに、ご苦労様なことだ。たぶん、部活だな。
うん!? よく見れば端っのほうでぼっちで歩いているのは天都笠さんじゃん。
「おーい、天都笠さん、何してんの?」
私が大きな声で彼女に声をかけるとギョッとしたように身震いしていた。
「うっ、春日井真澄か!? なぜ貴様がココに…」
読んで頂きありがとうございました。明日もなんとかこれぐらいの時間に投稿したいと考えています。よろしくお願いします。




