第419話 我孫子陣営の中に潜り込め③
「いらっしゃいませ~ってなんだ、春日井じゃん。ウチの商品を買ってくれるくらいお金が貯まったの?」
軽いジョークを叩いてくるのは私のクラスメイトの水無瀬由香里だ。
私が初めてPKした相手でもある。
都洲河から内々の相談? を受けた私が翌日、向かったのはクラスメイトの水無瀬のバイト先だ。
最近はバイトにも誘われなく、なったので勤務先を特定するのに時間がかかった。
同学年なのに退廃的な雰囲気を漂わせる美人さん。
彼女を訪ねたのは彼女は現実世界の経営のプロ。現場を知る叩き上げだからだ。
結果的に仕事を終わりを狙う形になったがちょうどいい。このまま、ファミレスにでも行って話を聞いてもらおう。
◇◆◇
ファミレスに移動した私はオーダーを入れると速攻であらましを説明した。
なにぶん、非現実の中でもさらに特殊な環境なので説明には時間がかかった。
全てを説明し終わった頃には2人共、皿に料理は残っていなかった。
「ふ~ん、【店舗経営者】なんて【スキル】もあるんだ~私も取ってみようかな」
とろとろ卵のオムライスを食べ終えた由香里はデザートにパンケーキを頼む。倹約家の由香里が遠慮せずにデザートまで頼んだということは、もしかして私のオゴリが確定したということではないだろうか。
「最近は私も菟玖波に槍を習ってるんだ。レベルも少しは上がったよ。春日井にPKの借りを返す日も近いね」
由香里は笑顔で毒を吐いてくる。以前は自分の情報分身体の生死になんてまるで関心がなかったのに。
少し変わったのかもしれない。
以前に比べると退廃さの中にも明るさが混じったようにも思える。才能ある人間が全てを諦めざるを得ない。そんな無力感から退廃的な雰囲気が滲みでていたが今は全てが無力だと分かっていても抗う。そんな力強い意思のようなものを感じ取れた。
「それでさっきの【喫茶MAOU城】だっけ。あたしの経験から言うとその職場は間違いなく崩壊するね」
サラッとトンデモないことを口にする。思わず、私は息を飲んで由香里の次の言葉を待つ。
「いや、理由はひどく簡単だよ。頭のいい春日井がなんで気付かないかな~ってレベルの問題だよ」
いや、ハイランカーの都洲河と2人で悩み、答えの出なかった難問だし。
「そもそも利益が減る原因は2つしかない。収入が減ったか支出が増えたかだけだよ」
答えを焦る私に由香里は初歩的な知識の確認から始める。そんなことはどうでもいいから早く答えを教えて欲しいのだが。
「客数が増えて売上も伸びている、なのに利益が出てないってことはそれ以上に支出が増えてるんだよ」
由香里が出した答えは私には納得のいかないものだった。
支出が増えてると言うが商品が売れば確実に利益は出るのだ。たくさん、売れればたくさん利益が出る。たくさん売れてるのに利益が減るなんておかしなことが起きるはずがない。そんなことが起きるなら商品の価格設定がオカシイということではないか。
って、まさか…
「何かに極化しすぎれば現場が潰れるのは当たり前じゃん」
由香里は極当たり前の事実を告げるようにシレッっと言った。
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