第418話 我孫子陣営の中に潜り込め②
「最近、なぜか利益が落ちているような気がするのだよ…」
都洲河の鉄面皮から自信なさげな声が漏れる。
「それだけではなく、スタッフの連携、いや空気自体が悪くなっている気がするのだよ…もちろん、春日井の前ではそんな雰囲気はみじんも見せないのだが」
都洲河も確信を持てていないのだろう。半信半疑といった感じで話を進めている。
「皆、頑張ってくれているのだよ。エピクテトスは常に一生懸命だし、リヒャルトシュトラウスは完成されたワンランク上の接客を行っている。古参の香咲車もリヒャルトシュトラウスに負けじといつも以上に頑張っている。その結果、客数も伸びたし、売上も増えた。なのにどうして利益が減っているのか…」
不思議な現象だ。なんとか我孫子陣営に潜り込むための情報が欲しくて毎日通っていたのだが純粋に興味を持った。
「単純にリヒャルトシュトラウスとエピクテトスの2人が増えたから人件費が伸びたんじゃないの?」
「そのぐらいの計算はきちんとしているのだよ。実はエピクテトスの研修期間が終わった後、スタッフを2人、別の店舗に異動させたのだよ。これでプラス・マイナス・ゼロになっているのだよ。むしろ、エピクテトスの給料はまだ最下位設定。異動させたスタッフよりも給料は安いから人件費は抑えられているはずなのだよ」
自分でも納得がいってないことを喋っているせいか都洲河の目は泳いでた。一つ一つ事実を確認していくことで自分でも原因を探っているのだろう。
「ちなみにリヒャルトシュトラウスの給料は契約通り春日井に払ってもらっている。もし、リヒャルトシュトラウスの給料をこの店が出していたらという架空の設定で計算をしているだよ」
聞いてもいないことまで都洲河は説明してくる。ここまで丁寧に説明するということは私に問題の解決に協力してほしいということなのかもしれない。
改めて説明をじっくり聞く。
しかし、内容は純粋に【店舗経営】に関することだ。私で役に立てるかどうかも分からない。
「単純に設定が間違えているだけなのかもしれんが…どの設定が間違えているのか分からないのだよ。このまま、決算を待てばハッキリするだろうが…何か間違いがあるのなら今の内に修正しなければとんでもないことになる」
確かにエピクテトスやリヒャルトシュトラウス、香咲車の表情をよく観察すると冴えない。単に疲れがたまっているのかとも思ったが違うようだ。
こういう場合は本人に聞くのが一番だと思うが皆、忙しそうにクルクル走り回っている。とても聞けるような状態ではない。
私の知り合いでこういったことを相談できるのは…
それこそ、ネブラスカ一等執政官だが今は絶縁中のようなものだし…
しかし、珍しく【魔王】様が困っている。これを解決できれば、都洲河ももっと私が我孫子陣営に潜り込むための方策に強力してくれるだろうか。
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