第416話 失った信用が背後から私の首を絞める④
その後、私はガリポリ領主館を去った。
これ以上イヴァンの負担になりたくなかったのだ。
本当はアクィナスの様子も聞きたかったが怖くて聞けなかった。
これが逃亡したものの末路か…
だが、これが現実だ。受け入れるしかない。
思えば形だけの領主といってもろくに仕事をしてこなかった。
実績といえば、【靴を履く百足】を退治したぐらいのものか。
よくよく考えれば、たいして働いてもいないので思い入れもない。
いまさら、領主に戻りたいとも、戻れるとも思っていない。
だったら、我孫子に攻めていられたって構わないではないか。最近聞いた噂では【領地経営】、【国家経営】、【店舗経営】ではスタッフの【好感度】も【経営】の重要な要素とのことだ。【好感度】があまりに低いと【職業レベル】の上昇や【スキル】の発現にも影響してくるとのことだ。
よって、我孫子といえどもそんなに無茶な【国家経営】はしていないと予想される。
せっかく恥を忍んで、情報を提供しに来たのにどいつもこいつもあの態度。しかも、【領主】の地位だけは温存しておいて出禁を食らわし実質的に権限を奪うのだからやり方が汚い。本当によく考えた手を打ってくる。
しかし、我孫子の侵攻を放置すれば最前線にあるガリポリ・ダーダネルス領は深刻な被害を受けるだろう。イヴァンなどあの性格だ、自分の誇りにかけて率先して前線に出陣し命尽きるまで戦うだろう。
アクィナスも同様だ。領主館が焼け落ちるその時まで、逃げることなんて考えつきもしないだろう。。
彼らは心の底からガリポリ・ダーダネルス領を、クロサガ王国を愛しているのだ。
ならば、やはり彼らが守ろうとしている領地を我孫子なんかに蹂躙させるわけにはいかない。
そう決心すると再び闘志が湧き、頭が冴えてきた。
私が現在のポジションを利用し、ガリポリ・ダーダネルス領のために最高のパフォーマンスを発揮する方法とは何か?
答えはスパイだ。
我孫子から更なる情報を引き出すことだ。
侵攻にはどの程度の軍勢を率いてくるのか? 編成は? 進軍ルートは? 何月何日に決行するのか? それら有益な情報を我孫子陣営から引き出し、クロサガ王国に伝える。
とりあえず、イヴァンになら衝突せず情報の伝達ができそうだ。ディズレーリもどの程度、使えるかは分からないが補助導線としてなら役に立つだろう。
問題なのは、それらを知るためには我孫子陣営の奥深くに入っていかなければならないことだ。首尾よく入ることさえできれば内部分裂を誘うことだって可能だ。
私の知り合いで我孫子陣営の者といえば…
やはり、都洲河か。
彼とは敵であっても騙し討ちのような真似はしたくないが。
まあ、まずは潜りこんでから考えよう。
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