第414話 失った信用が背後から私の首を絞める②
「ふん、領主会議の存在を嗅ぎ分けてきたと思えば随分と大きく出たな、春日井」
なるほど、月に1度しかない領主会議が行われているから私に入城させなかったのか。
おかしいとは思ったのだ。黒佐賀は祥君との契約でほとんど領地を割譲する覚悟でダーダネルス・ガリポリ領を譲ったのだ。
私が統治をしていないからといって、謁見もしないほどへそを曲げるというのはどう考えても妙だと思っていたのだ。
私を入城させないのは黒佐賀の意思ではなく、他の16領主だろう。
「それでも念のために聞いておいてやる。そのネタの情報源はなんだ」
ぐっ…賢いくせに賢くない行動を取ってくる。【皇帝】本人から直接、聞いたと言いたいところだがディズレーリはNPXCではない。
おそらく、八束学園のこと、【ジョブ】のこと、この世界のこと、プレイヤーのことを説明しても認識に防壁が生じ理解できないはずだ。無理に理解させたら嘗てのエミリーのようになる。
「情報源は明かせない。けれど、確度の高い情報であることには間違いない」
故にこんな曖昧な言い方になってしまう。
こんな言い方で誰が信じるんだと内心、忸怩たる思いで一杯だが他にうまい言い方を思いつかない。
唯一の救いはディズレーリがじっと私の目を見て真偽を図っている点だ。
「分かった。とりあえず、俺からその情報は伝えておいてやる。さっさと帰れ、兵が怯えている」
相変わらずのぞんざいな口調でディズレーリは報告を約束してくれる。
とりあえず、目的は達成したが…
だが、ディズレーリは本当に私の掴んだ情報をきちんと伝達するのだろうか?
たとえ伝達はしても優先度の低い情報として流す可能性もある。
会議の中でディズレーリがどの立ち位置にいるかも微妙だ。政軍分離が完全に為されているならディズレーリの発言力は極めて弱いはずだ。
そうであるならディズレーリがまっとうな報告をしてもやはり優先度の低い情報として扱われる可能性もある。
いやいや、直弟子だけあって黒佐賀に直接、報告するかもしれない。それなら目的は完全に達したが…
いずれにせよ、情報がどのように伝達・処理されたかを知る術は私にはない。それなら最悪の事態に備えてもう一つ手段を講じておくか。
最も知己のあったガリポリ領に直接乗り込み、ネブラスカ一等執政官に直接伝達する方法だ。
考えただけで頭が痛くなる。
あんな別れ方をしたのにどの面下げてガリポリ領に行けというのだ。それでも、私が行かねばガリポリ領が壊滅する危険性がある。
今は自分の感情など切り捨てて動く時だ。
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