第408話 生徒会執行部のクエスト⑪
「やれやれ…苦痛と流血を味わった末に何を得るのやら」
神亀はそう諦念に満ちたボヤきを発すると次々と蜂の姿をした高速飛翔体を生み出す。
もはや神亀のゾーンに入らなくとも次々と攻撃が飛んでくる。自衛から積極的攻勢へ切り替えたのだ。
交渉は決裂した。
私は神亀を攻撃することができず、渚もそんな私を見て参戦せず待機してくれた。
コミニケーションが取れ、自ら引いてくれるという相手に対して人族の都合で一方的に駆逐するのは間違っている。
たとえ、この世界がゲームであっても、いや、ゲームであるからこそ、その人間の素の価値観が如実に出る。
そう思う私の価値観が戦闘参加をためらわせる。私はそのような蛮行を認めていないからだ。
そして都洲河はそんな私の葛藤を理解しているのか加勢を求めることなく独り戦っていた。
私と都洲河は協力関係にある。それだけではない、彼は私のために不器用ながら色々、助けてくれた。
その全てが本当に私の助けになったかは疑問だが彼の私を助けようとする意思に間違いはない。
一体どうすれば?
私が俊巡している間にも都洲河と神亀の戦闘は進んでいく。
とうとう、都洲河の左腕が蜂の姿をした高速飛翔体の連続攻撃によって根本から断ち切られた。
「俺には春日井のような【浸透勁】は使えないのだよ。だとすれば、純粋な物理防御を上回る攻撃力を生み出さないと勝てないか…やむを得ん。手持ちの最大物理攻撃でしとめるのだよ」
不敵な笑みで都洲河はそうつぶやくと大きく距離を取る。
グレゴリウスの時と同じだ。あの距離が貯めの動作なのだろう。
そうして爆音を立てながら疾走し、超威力の7発の拳を放つ。
「七天鋼魔挫滅」
都洲河から放たれた星をも砕く7発の拳が神亀の甲羅に次々と叩きこまれる。
7つの拳は六角形を作り、最後にその中心を正確に射抜いた。
神亀の顔が苦痛に歪む。
ついに神亀の甲羅に亀裂を入れ、本体にダメージを通したのだ。
しかし、同時に都洲河の顔も苦痛に歪む。都洲河の右腕も肘から先が原型を止めていない。
技の超威力に拳が耐えられなかったのだ。
それでも、なお、都洲河は戦闘を継続しようとする。ひしゃげた右腕のようなものを甲羅の亀裂に突っ込みゼロ距離で魔法を撃とうとする。
「これで終りなのだよ」
「待ちなさい!」
私は最も初歩的な【白気弾】を撃ち都洲河の動きを止める。
「この勝負、私が預かるわ」
解決策もまとまらないまま、気付けば私はそう叫んでいた。
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