第405話 生徒会執行部のクエスト⑧
その後、甲斐田と都洲河は席を外した。
しばらくするとテントの外でザワザワと人の声が聞こえる。
どうやら、私達のテントの前で出陣式をやっているようだ。
人がこれだけいる中でテントから出て散策するわけにもいかない。私と渚はずっとテントの中で雑談と意見交換をしていた。
15分ほど経っただろうか。ようやく、出陣式が終わったようだ。今から徒歩で進軍するのかなと思っていたら突如、【転移】の気配を感じる。
しかし、周囲の景色に変わりはない。渚も驚いた顔をしながらもそこにいるし、テントも変わらずそこにある。
だとすれば【集団転移】、いや、施設ごと根こそぎ転移させたので【フィールド転移】か!?
ずいぶんと桁違いの【スキル】を持つプレイヤーも存在する。
私が驚いていると甲斐田がテントに戻ってきた。
「さて、これから先行突撃偵察隊が神亀を誘導してここへ誘いだします。もう少し歓談していて下さい。というより、私も歓談に混ぜてもらいましょうか」
図々しく甲斐田は私達の会話に混ざってくる。
私の知らない私の情報まで抜き取られそうなので断りたかったがそうする理由もない。諦めて甲斐田も混じえて雑談をする。
甲斐田は流石に知性派というだけあって話題の種類が豊富だった。
気を抜かずに気の抜けた雑談をするというのは思ったより大変な作業だった。
どれほど時間が経っただろうか。私がこれは精神の消耗戦をしかけられているのではと疑っていたころ、先行突撃偵察隊から報告が入った。
「神亀だ! 神亀が現れた~ぞ!」
「おや、ようやく獲物が現れたようです。それでは春日井先生お願いします」
まるで、越後屋が用心棒にかけるような台詞を甲斐田は吐いた。
視界の先に大型バス程の巨大亀がゆっくりとこちらに進撃しているが見えた。動きは遅そうだが、いかにも固そうだ。
テントの外に出ると鬱蒼としたジャングルの中だった。やはり、他のテント群も転移してきており、私達の周辺数キロだけ土壌が違った。
私が外に出ると多くの生徒達が私に注目する。よく見れば、1年A組の生徒の姿も見える。
まるで動物園のパンダになった気分だ。恥ずかしい。
「これはお前の余興か、甲斐田?」
そんな中で我孫子が不機嫌さを隠さずに私を飛び越えて甲斐田に問うた。
「ええ。我孫子もプレイヤーキルマイスターの相方の実力を見たいでしょう」
「彼女が真にプレイヤーキルマイスターの相方なら興味はある。しかし、どれほどの【レアスキル】を持っていようとあの人と実力面で次元が離れすぎている。世評は彼女の容姿を示しているのだろう」
「私の評価はまた違いますね。何と言っても私に予測を外させた女性ですからね。まあ、見物していれば分かるでしょう」
どうにも勝手なことを言ってる。テンションがまた下がり、腹は立っているがやるしかない。
【鑽気のブレスレット】を外し、全力の【黄金気】を纏う。
すると私の隣に都洲河が立った。
「いいの、都洲河? 書記や副会長に叱られるんじゃないの?」
「構わないのだよ。春日井にばかり負担をかけるのは本意ではない。このクエストのホストはあくまで俺なのだよ」
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