第403話 生徒会執行部のクエスト⑥
「すまなかったな…客人」
我孫子がテントから完全に出て行ったのを確認すると、甲斐田は瞳を閉じたまま私の方を向いて謝罪した。
「そういう無礼を働いた人間がいなくなってから謝るのが一番イラつくんですけど。本当にそう思うならその場で反論して下さい。私にも相手にもいい顔しようとするのはムカつきます」
私は自分が感じた不快感をそのままぶつける。
甲斐田は瞳を閉じたまま苦笑いを浮かべた。
「しかも私が斬りかかろうとしたら止めるし」
「アレは純粋に君を助けようと思っての行為だよ。あのまま、抜いてたら君は絶対にPKされていたよ。それにもちろん、我孫子も君の殺気に気付いていたよ」
私と喋りながらも甲斐田は決して目を開こうとはしない。やはり、このずっと目を閉じるというのが【代償】なのだろう。
あえて視覚を断ってプレイを継続するというのはどういうの覚悟なのだろうか。
人生の数%を確実に溝に捨てていると思うが。そうまでして甲斐田が為したいことは何なのだろうか。喋りながらそんなことを考えていた。
「PKされても通すべき意地というものがあるんです。舐められっぱなしだと、後でまとめて辛い目にあうんです」
「君のように守るものが無ければ、そのような態度にも出られるが全てのプレイヤーがそうだとも思わないでほしいな」
お説教じみたことも甲斐田は言ってくる。こちらの副会長殿はやはり、我孫子と違って人間ができているらしい。私には役に立たないアドバイスだが…
「まあ、君に興味があったのは事実だ。都洲河が連れてきてくれればベストだとも考えていたが無理だろうとも思っていた。私のプロファイリングや分析が間違っていたのか、君の心境に変化があったのか…それとも私の読みを外すのが君の特性なのか…いずれにしろ、私に読みを外させるプレイヤーというのは貴重だ。仲良くやろうではないか」
甲斐田が握手を求めてくる。このプレイヤーもどうにも危険な感触がする。しかし、先程、我孫子の無礼を指摘したばかりだ。ここで私が礼儀知らずなことをするわけにもいかない。我慢して握手に応える。
「さて、互いのわだかまりも多少は解消したことだし、クエストの話をしようか。この第6階層は知っての通り神のエリアだ。フィールドに現れる雑魚モンスターですら神の息がかかっており散策するのも困難だ。まして、グランドクエストの攻略など夢のまた夢だ。ハイランカー達のグランドクエストも多くはココで止まる。先人達はどうやってこの階層をクリアしたのか検討もつかない。そこで、ココで立ち止まっているプレイヤーは一致団結してグランドクエストに挑むことにした。その中で考案された手段が全面結界だ。【矛盾だらけの階層社会】の結界を拡張し第6階層の全てを我々の生存圏にしてボス戦に挑む。その構想実現のためにそれぞれのギルドで代表者を出し、最高意思決定機関も作った。我々もその一翼を担っている。そこから、各ギルドにノルマを課し、結界拡張作業を分担することにしたのだ」
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