第402話 生徒会執行部のクエスト⑤
その後も我孫子はネチネチと都洲河を叱責していた。まるで他人への叱責が最大の娯楽だと考えているような叱り方だ。とても、より良きものを作ろうと指導する類の叱責ではない。
私が呆れて介入しようかと考えていた頃、不幸にも向こうに気づかれてしまった。
「うん!? 後ろの女達は誰だ? 俺への貢物か? お前にしては気が聞いているじゃないか」
我孫子は私達を見ながら下卑た感想を抱く。
ただでさえ第一印象が悪いのにその一言でも私の我孫子への評価はダダ下がりしていた。【職業:皇帝】というステータスには興味があるがそれ以外が駄目すぎる。
これでよく【皇帝】など勤まるものだ。
「そうか! コイツが春日井真澄か! ぎゃはははははは。都洲河なら必ずやってくれると思ってたぜ! これで賭けは俺の勝ちだな、甲斐田」
私が殺気を込めて睨んでいると突如、我孫子の様子が豹変した。
なんだ!? 何の賭けをしていたのだ?
「そうだな…私が勝つ確率が高かったから賭けに乗ったのだが…情報の精度と人物のプロファイリングが甘かったということか…」
我孫子に水を向けられた相手はまるで気配を感じさせずそこに座っていた。男か女なのかも分からない人だ。肩まで伸びた黒髪が落ち着いた雰囲気を醸し出している。
最も気になるのはずっと瞳を閉じて喋っている点だ。おそらく【代償】だろう。
コイツが【副会長】か。
「堅物の都洲河がよくひっかけこれたもんだぜ! 俺、直々にプレッシャーを与えてやった甲斐があったものだ。まあ、【喫茶MAOU城】の賃貸料についてちょっと強請ってやったら簡単に落ちたんだがな~」
事情を説明せず我孫子と甲斐田だけで盛り上がっている。
都洲河は視線を合わせずじっと床を見ている。私の存在を賭けのダシに使ったことが暴露されて恥じているのかもしれない。
なるほど、おおよその力関係は分かった。目の前の馬鹿が全ての元凶か。
楽しいのは本人1人で、それに付き合わさている人間は皆、気苦労を重ねている。そんな状況が透けて見える。
こういう馬鹿にはお灸が必要だ。八束学園生徒会執行部書記、そして、【皇帝】の力がどれほどのものか見せてもらおう。
「我孫子、そろそろ時間だ」
私が【NS110鋼の剣】を展開しようとすると狙ったようなタイミングで甲斐田から声がかかる。
上手く機先を制してくれる。そのせいでタイミングが決定的にズレた。
「さて、都洲河の動揺した顔も見れて、まあ、満足だ。甲斐田の言う通り、他の部隊にも顔を出さなければな。後は任せる。客人はクエストの邪魔にならないように隅っこで見学するがよかろう」
それだけ言うと、我孫子は私に対する興味を失ったようでテントの中から出て行ってしまった。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿も頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチっとが私の創作の『谷深ければ山高しなのだろうか…』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。