第400話 生徒会執行部のクエスト③
第6階層、見たところ他の階層と大きく違いはない。だが、この階層以下が他の階層と決定的に異なっているのは生物が全て神、神の眷属だということだ。
よって、そこら辺のフォールドに現れる雑魚ですら強力な力を秘めている。正直、レベル4の私が立ち入っていい場所ではないのだ。
何でも呪いがかかるから簡単には立ち入れないとのことだったが…
視線で渚に問いかける。
「私のグランドクエストは第5層攻略の最中だ。安全マージンをたっぷり取っているからな。物見遊山でこんなところまでは来ない。第6階層に来るのは初めてだ…」
渚は半ば拉致られたような格好で強制的に第6階層にまで連れて来られたが動揺はない。先程の私との衝突の方がよっぽど心が乱れていた。
「こっちなのだよ。そう緊張する必要はない。既にこの辺りは人類の生息圏だ。神々との戦闘など、起こらないのだよ」
私がオドオドしながら周囲を警戒していると、見かねた都洲河が先に進みながら声をかけてくる。
彼を追いかけながら情報収集を開始する。
「『人類の生息圏』って言ったけど、八束学園生徒会執行部が神々の領域を開拓したってこと?」
「いや、確かに我々も独自に開拓はしているが橋頭堡を築いたのは別の集団だ。確か【ラディカル・ダイバーシティ】。我々は彼らが作ってくれた基礎をさらに拡張しているだけだ」
「神々の領域を侵犯しているのに彼らが攻めてこないのはどういう理屈だ? 『人類の生息圏』と言うが周囲を壁で囲っているわけでもあるまい」
渚が言った。どのみち、神なら【飛行】、【浮遊】、【転移】など何でもござれなので確かに謎だ。
「従者のくせに度胸のある女なのだよ。【ラディカル・ダイバーシティ】の大賢者だかが作ったアイテム【矛盾だらけの階層社会】のおかげなのだよ。これを使って四方を結界で覆っている。結界内は神族の侵入を禁止するとのことだ」
都洲河の口調は荒いが渚の疑問に丁寧に答えている。これは渚にも興味を持った証拠だろう。あとで【喫茶MAOU城】に誘われるぞ、渚…
「そんなアイテム作れるわけがないだろう。神族の侵入を禁止するなんてどういうカラクリだ。全ての知性体の頂点に立つから神なんだろう」
「憤ったところで実際に存在するわけだから仕方なかろう。もっとも現在では、その大賢者も行方知れず。作成できる者も絶たれてしまったとのことだが。俺の考えではダンジョンや迷宮のセーフティールームのボス部屋前のプリペイションルームの応用だと考えるがどうだ?」
「確かにセーフティールームやプリペイションルーム原理を応用すればできるが…そんなユニークスキル存在するのか…いや、【種族:神族】に対象を固定化し常時発動させる。後は座標を設定し、侵入した者にダメージを与えれば…駄目だ。神の大規模HPに対して死の恐怖を与えるほどのダメージなんて不可能か…」
渚は都洲河の問いに全力で答えようとしている。設問そのものが面白いからだろう。
いつの間にやら渚と都洲河は苗字で呼び合えるほど議論が白熱している。予備知識のない私は置いてきぼりだ。
「ダメージを与えるのではなく文字通りの侵入禁止だ。ダメージを与えるでは天都笠が言った通り上級神や神の侵攻を止めることができん。神をあらゆる知性体の頂点と定義付けしているがそこから間違っている。神以上の存在が2種類存在すると仮定すればどうだ?」
最後に都洲河はまとめるようにこう結んだ。
「すなわち、ゲームシステムとゲームマスターだ」
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