第393話 全てが順調に進んでいると思える瞬間が一番まずい。負債の導火線に火が点いたからだ②
その後、リヒャルトシュトラウスとエピクテトスはバックヤードに消えていった。
明日からの勤務の前に少しでも業務の知識を得たいからだ。もちろんリヒャルトシュトラウスの提案だ。
香咲車がそれを聞いてえらく張り切り、嬉しそうに2人を連れていった。
席には私達2人だけが残される。
都洲河は先程からずっと何かを考えてる。おそらく、自分の何がリヒャルトシュトラウスを不快にさせたのかまだ考えているのだろう。
謂われなき、中傷であれば処分も考えねばならない。
私も不安だ。あんな調子でリヒャルトシュトラウスはやっていけるのだろうか。飲食店の勤務経験の無いエピクテトスの存在も気がかりだ。
癇癪を起こして客に暴言を吐いたりしないだろうか。香咲車や都洲河と上手くやっていけるのだろうか。
やはり、気がかりだ。明日からはちょくちょく様子を見にこよう。
そんなことを考え、今日のところは帰るかと席を立とうとすると都洲河から声がかかる。
「春日井、我孫子書記長のクエストの件だが…」
やはり、覚えていたか。
まあ、私も忘れていたわけではない。明日以降に回して欲しかったのは事実だが。
ここで帰させず、まだ話を続けるのは几帳面な都洲河らしい。
「分かってるって。もう君の好きな日程でセッティングして。特に予定は無いから。リヒャルトシュトラウスとエピクテトスが心配だから明日また来るよ。その時にでも教えてよ」
「そうか…助かる」
ホッとした顔になる。色々悩みを抱えててそのうちの一つが解決したのだろう。
「それと報酬の件だが。先払いとしてこれを渡そう」
都洲河から黄金色のブレスレットを渡される。【鑽気のブレスレット】と表示が出る。
私が怪訝な顔をしていると都洲河からフォローが入る。
「リヒャルトシュトラウス氏とエピクテトス氏の紹介料だ。春日井は手付金代わりと言うがあれほどの人材を紹介してもらってタダという訳にはいくまい。武力、資金、情報、どれを渡せばいいか寸前まで迷ったが今、渡せる最善の品がそのアイテムだ」
「自分で紹介しておいて何だけど、まだ2人が【店舗経営】に役立つと証明された訳じゃないよ」
「それも含めても代価なのだよ。どんな名刀も使い手が2流であれば真価は発揮せん。あの2人を扱いきれるかは俺の器、次第なのだよ。2人の結果までは保証できんが春日井は気にせず、コレはという人材を見つけたらドンドン紹介してほしいのだよ」
そう言う都洲河はまさに魔王の器というものを見せてくれた。
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