第39話 ワガママで可愛くて感情表現が豊かなNPCです
「これが第1大陸の夜景ですか!!!」
エミリーが驚いた声を上げる。
「赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の街灯ですか、まるで虹の色ですね、すばらしい! 全ての色の光を魔法で再現しているのですか!!! なんと豊かな…まさに魔法科学の結晶ですね」
街のネオンを見てエミリーが無邪気に喜んでいる。
いや、ネオンだけではない。街灯、道路、建物、車、コンビニ、自動販売機、見たもの全てに感動している。
あんな姿を見ると決闘までして第1層につれてきた甲斐がある。
しかし、もう深夜だ。疲れた。連続フルダイブ記録を大幅に更新してしまった。
いいかげん、ログアウトして寝たい。
というよりも朝からぶっ通しでログインしてるのだ、いくらなんでも母が怒るかもしれない。
いや、これはアルバイトなのだと説明すれば納得してくれるか。
それでも、今日はプレイ続行不可能だ。とりあえずエミリーを宿に預けてログアウトしたい。
そういえば私はログインして宿を取ったことなかったな、相場はいくらぐらいなんだ?
祥君にお金借りなきゃいけないか?
だめだ、疲れを自覚したら余計に疲れてきた。心なしかなしか情報体の動きのキレも思考のキレも悪くなってるような。
嗚呼、ここで現実世界の私が居眠りとかしたらどうなるんだろう…
いかん本当に眠むくなってきた!
ダメだ。こういう時はなんでもいいから会話をして目を覚まさねば…
「祥君は疲れてないの? 眠くない?」
「なに真澄さん、もう疲れたの?」
「ええっ、だって朝から休憩なしでもう10時間以上プレイしてるよ、なんで疲れないの?」
「ああっ、オレは最長1ヵ月連続ダイブとかしたことがあるから、まだ平気だよ」
げっ、さすが高位プレイヤーだ。常識が一般人とまるで違う…廃人一歩手前じゃん…
「けど、ダイブ時間でいったらオレなんかはまだまだだよ。HIGH人は本当に1年とか平気でダイブするし、金を稼ぎにゲームをプレイしてるやつらも2週間とかは普通にログインするよ。それくらいしないとレベルも上がらないし、深層の探検なんて無理だし、元を取るなんて不可能だよ。難しいのはもっと先でプレイ時間とレベルがアップがイコールでなくなってくると辛いんだ。実はそれが第一の壁なんだよ」
「そんなに長い間時間ログインしてて、家の人はなにか言ってこないの?」
私はあまりに眠すぎて無遠慮なことをポロっと聞いてしまった。
「うちは両親が早くに死んで、姉貴が育ててくれたんだけどその姉貴がもう5年ぐらいログインしてるんだ…」
祥君まるで仇の存在を語るかのように答えてくれた。
読んで頂きありがとうございました。なんとか完成しました。感想、評価などあればお待ちしています。




