第36話 最強のNPCの護衛をつけるために手持ちの方策について考える
しかし、エミリーの剣がグロスに届くまでの一瞬、グロスは私とのつばぜりをあっというまに振りほどき、空に逃げた。
そしてエミリーと同じような剣に白い光をまとった一撃を彼女に浴びせる。
「エクシード流剣王技、重烈撃聖剣」
グロスはエミリーと同じ技をエミリーに向かって放った。
剣にまとう強き白の輝きは両者互角。
しかし、体格や筋力は剣王のほうが上。
かくして、エミリーはまたしても打ち負ける。
「選択ミスです、姫様。その技は聖の魔法が使えぬ歴代剣王が冥龍王打倒のために編み出し、私が姫様に教えた技です。冥や闇の属性を持たぬ我々には一定以上の効果がありません」
グロスが剣を下げ、姫に語りかける。
「やはり、これ以上の戦闘は無意味です。あなたでは私を倒せません。これが最後の警告です。おとなしく城へお戻り下さい」
「何度も言ったはずです。お断りします。お師様こそ、わたくしを倒す決め手がないはず。このままでは千日手です。もう諦めて下さい」
「やむをえませんな。あまり褒められた手段ではありませんが…」
グロスがそうつぶやくと私の方に向かって駆けてきた。
ヤバイ、私狙いだ。
弱い人間を最初に潰し数を減らす。
私がやられて動揺したエミリーを狙う気か。
あるいは今後、私の護衛としてエミリーは働くことになっている。
たとえ、エミリーが剣王に勝ったとしても私がやられたら祥君の気が変わるかもしれない。そこまで読んだのか!?
剣王は私に向かって重い一撃を放つ。
くそ、さっきまでとはとは段違いの重さだ。
さっきまでは【剣王】が素人剣士相手に怪我をさせては面目に係わると力を抜いていたのか。
しかし、グロスの意識が私に向いてるなら背中ががら空きだ。
エミリーが決めてくれるはず。
そう思いエミリーの方をチラッとみると既にエミリーはグロスの背後を取っている。
「三段斬り改!!!」
「エクシード流剣王技、廻怪天転!!!」
グロスはまるで人間独楽のように大回転を始め、私とエミリーをまとめて吹き飛ばす。
だめだ、まとまな人間が使う技じゃない。
さすがは【剣王】か…
どうする!?
こっちは手詰まりだ。
エミリーにまだ何か策はあるのか!?
距離が離れているため、連絡手段がない。
完全に分断された。
分断して一人一人殺る気か…
NPC相手ではチャットも使えないし、嗚呼イラつく。
何かないのか。
私は設定のウィンドウを呼び出しNPCとの通信についてななめ読みする。
内部通信(気)という項目がある。
【白気】を修得したことで実装されてたのか。
パーティーを組めばNPCとも思考を使った通信ができるとある。
そういえば、パーティーすら組んでいなかった。
慌ててコマンドからエミリーをパーティに入れ内部通信(気)を使ってみる。
(エミリー聞こえる?)
エミリーは驚いたようにこちらを見る。
(えっ、真澄様ですか? これは魔法? 通信魔法というものですか? けれど、魔法を使ってらっしゃる痕跡がない。ならばこれが念話というものですか? 異世界人という人種は系統外魔法を使えるとは聞いてましたがここまでの精度を誇るものとは…)
(まあ、驚くのは後にして、エミリー、他に起死回生の策は無いの?)
(先ほどまではありませんでしたがこの系統外魔法が使えるのなら、もしかして…)
エミリーは息を整え、なにかを思い出すような仕草をして答えた。
(真澄様、異大陸の方のパーティーやギルドに入るとなぜか入ったこの世界の住人の能力が底上げされることがあると聞いたことがあるのですが…真澄様はその能力をお持ちではないのですか?)
パーティ内補正のことか!?
たぶん、高位の職業のオートスキルにそんなのがあるんだ。
けど、私はまだレベル4の【見習い剣士】…
そんな補正持ってないし…
いや、まてよ。もしかして!!!
読んで頂きありがとうございました。明日から更新のペースと更新時間を落とすかもしれません。理由はなんかダラダラと剣王戦を書いてますが中身がないような気がして…毎日更新はいいがもっと煮詰めて面白いものをつくらねばと考えたからです。明日は下書きがあるからなんとかなるかもですが…




