第354話 戦闘報酬は新たな揉め事!?⑦
都洲河はあまり議論が得意のではないのだろうか。
押されている格好だ。
私が激高せず、淡々と理論を重ねて行ったのが功を奏したのかもしれない。
「まだ、群れから完全に排除した訳ではない。罰を与えただけだ…」
とうとう、こんな台詞まで飛び出してきた。
根は素直な人間なのかもしれない。
一方、私としてはせっかく祥君が転入手配してくれた八束学園だが急速に気持ちが冷めていた。
好きな時に通い、好きな時に帰ればいいという八束学園だが表のルールと裏のルールが混在し、メンドイ。
これなら、しんどいが普通の高校に入学したほうが納得感がある。
喋りながらもそういう計算が私の頭を占めていた。
だからこの言葉を発したのも私の中ではなんら不思議ではなかった。
「それは重畳。なら、こちらから絶縁状を叩きつけることができるわね」
言ってしまった~
言ってしまったぞ~
もう後戻りはできない。
辞める辞めないの言葉はそんなに軽いニュアンスで使っていいものではない。
一発限りの宝剣だからその効果も絶大なのだ。
しかし、後悔は無い。
そもそも生徒会執行部に完全な服従を義務付けられるってどんな封建主義社会だよ。
「今から学園長のところに行って退学届を出してくるよ」
教室のドアから出て行くとまた、進路を阻まれるかもしれない。
自分で作ったボロい出入口から出て行こう。
こういう格好付けしたい時になんともダサいが止むを得ない。
「待った! いや、謝罪が先か…すまない、春日井。いや、そうでは無いな、申し訳ないか…」
都洲河は立ち上がって去りゆく私を後ろから呼び止める。
随分と態度が殊勝だ。
「この学園のルールを知らない君にゴリ押しをしてしまった。まず、それを謝罪しよう。すまない春日井。そして、先日の我孫子書記のパーティー勧誘の件に関しては俺からなんとかとりなそう。許してもらえるかは分からないが俺も一緒に謝れば少しは我孫子書記の心象も良くなるかもしれない。ああみえて、我孫子書記は気分屋だ。もしかしたらまだ、芽があるかもしれない。母君の誕生日を祝おうとした君の篤実さを貶した件に対しても謝罪しよう。辺志切が行った【空間操作】のイタズラも勿論本人から謝罪させる」
私の返事を待たず都洲河は次々と言葉を重ねる。
「君の発言は有益だ。君の発言は俺の信念を揺るがすものばかりだ。心に波紋を広げる。できることなら君とは良い関係を築きたい。だが、生徒会執行部の指示に反することができない。生徒会執行部の指示は絶対だ。他の全ては譲ってもこれだけは譲ることができない。頼む、春日井。コレだけは譲って引き続きこのクラスに在籍してくれないだろうか!」
都洲河はその大きな身体を90度に曲げ、謝罪している。
私は都洲河を見直した。
ここまで揉めた相手にこうまで譲歩し、折り合う道を模索しているのだ。
正直、かなり心は動いた。
元々、小さな確執が原因だ。
この謝罪のおかげで全てを水に流すこともできた。
相手が都洲河だけならこちらからも謝罪を入れ再び席についただろう。
生徒会執行部の義務とやらにも付き合ったかもしれない。
しかし、都洲河以外がてんで駄目だ。
ニヤニヤと私達を笑って見ていて、てんで話にならない。
唯一、飾磨巧だけが心配そうな顔をして私達を見ていた。
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