第32話 最強のNPCの護衛をつけるために剣王攻略のヒントをもらう
(ちょ、祥君、ヒント!ヒント頂戴!)
堪らず、私は内部通信(電話)で彼に助けを求めた。
(ちょ、さっきのは何だったのよ、教えてよ祥君)
私はまるで宿題の答えを尋ねるような気安い雰囲気で祥君に声をかける。
(うわ、ずる~戦闘中にアドバイスを求めるなんて)
すると呆れたような、嬉しそうな声で祥君は返事をしてくれた。
(今のは【巻き落とし】。純粋な剣技だね。オレらは【剣士】のジョブについて、直剣をしばらく使ってればれば覚えるよ。斬撃の途中に捻り加えて相手の剣を吹き飛ばす技だよ。【気】の運用法がだいぶ分かってきたみたいだけど、まだまだ甘いね。今みたいな螺旋運動に対抗するには今まで手だけに意識を集中させてたのを腕全体に代えないとダメなんだよ。さらに集中しすぎるのもダメ。柔らかさの認識を持ち、力の緩急をつけてどんな攻撃にも柔軟に対応できるようにならないとダメなのさ)
難しすぎる。
抽象的すぎてまるで参考にならない。
しかし、せっかく答えてくれてるのだ。
ここは聞けるだけ聞いておくか。
(ちょっと、どこがエミリーと【剣王】は互角なのよ。エミリーの方が断然押されてるじゃない)
気が付けば、クレームをつけるような言い方になっていた。
折角、好意で教えてくれているのにこういう言い方はないか…
反省しつつ、祥君の返事に耳を傾ける。
(正確にいうと互角でも無いんだ。実はエミリーの方が圧倒的に強い。意志力が段違いだもん。たぶん、NPCで最強クラスなんじゃないかな。少なくともオレが知る中では10本の指に入る苛烈さを持ってるよ)
私のつっけんどんな言い方にも気分を害せず、とても穏やか様子で答えてくれる。
案外、人にモノを教えるのが好きなのかもしれない。
(意志力と純粋な戦闘能力どう関係してるのよ)
(【気】の運用法で分かっただろう。【気】は意識と深く関係している。集中、意識の濃さって言った方がいいかな。結局、どこまでいっても心なんだよ)
そこだけ祥君はまるで重い息を吐きだすように言った。
(まあ、女の子だしね。純粋な腕力では剣王に分があるよ。あとで、エミリーにも【気】の運用法を教えてあげなきゃだね)
(さて、そろそろ見学も飽きたし、真澄さんだけじゃなくて、エミリーにもスペシャルヒントを出すか!)
そう告げると祥君は肉声でエミリーに語りかける。
「エミリーそろそろ分かんないかな。別に一人で【剣王】を打倒しろなんて言ってないよ。自分の実力を正確に測り、必要なら他者の手を借りる。こんなこと王家の人間なら誰でも知ってる考え方だと思うけど」
読んで頂きありがとうございました。明日もなんとか25時すぎ投稿で頑張りたいと思っています。よろしくお願いします。




