第296話 春日井真澄VS聖竜皇ディオクレティアヌス⑱
「私の【黄金烈眞槍】ですか?」
イグナティウス戦で無我夢中になりながら使った技だ。まだ、一度きりしか使ったことのない技で正直もう一度出せるかどうか怪しいところだ。
「ええ、喰らった私しか分からないと思いますがあの技は威力も凄まじいですが【封印】の派生効果があります」
「【封印】!?」
「喰らった人間を問答無用で行動不能にすることです。それを【封印】と呼ばずなんと呼ぶのですか?」
なるほど、技を作り出した本人に自覚は無いがそんな効果があったとは…
「そんな切り札があるならなんで今まで教えてくれなかったんですか?」
別にイグナティウスに含むところはなかったが聞かずにはいられなかった。もっと早くに教えてくれれば戦局をより有利に進めることができたかもしれないのに…
「聞かれなかったからです」
イグナティウスは悪びれることなく、シレっと答えた。
おそらくこのピリピリとした空気を和ませるために言ったのだろうがユーモアのセンスには欠けている。
その鋭敏な感覚で逆に雰囲気が悪くなったことにすぐ気付いたイグナティウスはすぐに訂正をいれてきた。
「…というのは冗談です。理由は幾つかあります。まず、第一に果たして竜の皇たる聖竜皇に効くのか? 後衛の私のHPなどたかがしれています。しかし、聖竜皇の莫大なHPを削りきって、なおかつ、封印まで持っていけるのか? 第二に神器鎧の防御を抜けるのか? あの出鱈目な防御力のせいでまともに放っても無効化される気がします。ということは天都笠さんのように鎧の隙間を狙うか、カスティリィヤのように浸透攻撃を行うかです。しかし、どちらも真澄さんの実力では不可能でしょう」
そこまで言うとイグナティウスは一拍、呼吸を置く。そして、意を決すると、私の目をまっすぐ見つめ切り出した。
「第三の理由…これがメインですね…あなたにこれ以上、力をつけさせたくなかったからです。忘れないで下さい。あなたは教団を破壊しに来たんですよ。ヴァレンシュタインにとても酷なことを要求しようとしている。私も非常事態でしたので口では協力を依頼しましたが本当は嫌でした。このような場で言うのは卑怯だと分かっています。ですが、どうか、ヴァレンシュタインへの要求を取り下げてくれませんか?」
この土壇場でとんでもないことを提案してきた。私が答えられずにいるとイグナティウスはさらに畳みかけてくる。
「もちろん、聖竜皇をあのまま野放しにはしておけません。そのための協力は引き続きお願いします。別の形で報酬は必ずお支払いします。私にできることならなんでも協力します。ですから、どうかヴァレンシュタインへの要求だけは勘弁願いませんか?」
戦闘中にもかかわらず、私達はパーティー分裂の危機を迎えていた。
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