第295話 春日井真澄VS聖竜皇ディオクレティアヌス⑰
「地面に頭から叩きつけられる経験なぞ、200年ぶりじゃな…なるほど、大地に勢いをつけて叩きつけられれば神器鎧にどれだけ防御力があろうともダメージを喰らう。考えたものじゃ…」
小山を一つ投げ飛ばす豪快な一本背負いが決まったにもかかわらず、聖竜皇は悠然と起き上がってくる。この竜は防御力だけでなく、HPも凄まじいのだ。おそらく、渚の攻撃とカスティリィヤの攻撃でHPは多少、減ったがまだまだ底も見えない状態だ。
「お主らは群れで行動する1つの個と考えたほうが良いのかもしれんな。2人、3人で行動し1つの行動を完成させる。だとすれば、先程の剣の勇者には酷なことをしたかもしれん…我と1対1で戦える者などこの地上にはそうはおらんのじゃから…」
再び、神器剣を構え直しカスティリィヤに襲いかかる。見事な回避を見せるがカスティリィヤの表情は冴えない。
おそらく、カスティリィヤの切り札は【浸透勁】と【一本背負い】だったのだろう。確かにダメージを与えることができたがとてもHPの全壊には及ばない。
そして、知性溢れる聖竜皇が相手なのだ。同じ手はそう何度も通用しないだろう。あの巨大なHPを削りきるための方策が必要なのだ。
「渚、イグナティウスさん。何か方法はないんですか?」
私は自分の無能を棚に上げ、藁にもすがる想いで2人に尋ねる。何か方法があれば、とうの昔に使っているか提案してきているだろう。そんなことは理解しているが聞かずにはいられなかった。
「まず第一段階として、あの【神器鎧ダームスタチウム】の防御力をなんとか無効化しないとどうにもならんだろう。だが、私が最弱のスライムに【雷滅翠嵐劫火炎熱斬】を使ってもダメージ100億は100回やって1回出るかどうかだ…現状、攻略の方法は何もない」
無念にうち震えた顔で渚は答えてくれる。
そんな渚を見て叱咤するようにイグナティウスは答える。
「ビビリすぎですよ、天都笠さん。まず、【神器鎧ダームスタチウム】の防御力が100億とは限りません。ブラフの可能性も充分にあります。仮に事実だとしても、あなたがやったように鎧の隙間を攻撃する。カスティリィヤがやった浸透攻撃。他にも魔法で焼き殺す、鎧通し、精神攻撃など多種多様な攻略方法があります。無敵の鎧なんてありません。絶対に攻略不可能なんてことはこのゲームにも現実世界にもありません。思考を止めれば、そこで終わりです」
イグナティウスはこの絶対的な逆境状態にあっても凛々しく宣言する。こういう姿勢が教団の皆に慕われている理由なのだろう。
「確かにな…あまりの戦力差に弱気になってたぜ…初歩的な原則を忘れるなんて、まだまだだな…」
渚の目に再び、闘志が燃え上がる。こうなった時の渚は強い。元より、諦める気なんてサラサラ無かっただろうがさらに張り切って働くだろう。
「そして、切り札ならあります。真澄さんの【黄金烈眞槍】です」
そして、ここに来て思いもよらない提案がイグナティウスから出てきた。
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