第29話 最強のNPCを護衛につけると聞いていたがやっぱり話が違う
「その後、私は彼に請いエクシード城まできてもらい、そこで数ヶ月、この国に逗留されたのです。元々、冥龍王を撃退した者を王位につかせるというのは初代様からの遺言でした。ショウ様は当然のごとく条件を満たしているのに、自分は一介の冒険者にすぎないから王位継承などできないとおっしゃる。しかし、初代様の御遺志を尊重し、なんとかショウ様に王位継承を呑んでもらおうと我が父を筆頭にあの手この手で勧誘します。私もショウ様には王位継承を引き受けてもらいこの国をさらに発展させて欲しいと思っていますがショウ様程の人材をこのような辺境の国に縛り付けてよいのかという懸念もありました。ショウ様はこの大陸、いやこの星全ての繁栄のために立つべきなのではないかと思ったのです」
エミリーの話はクライマックスを終えいよいよエピローグに入っていった。
「そのような私の葛藤を見抜いてらっしゃたのでしょう、わたくしにも頻繁に声をかけ、別大陸の話などをよくして頂きました。剣に生き、己の剣の限界を知り、人柱を志し、人柱から解放された当時のわたくしは生きる目標を見つけ出せずにいました。ですから当時のわたくしには別大陸の存在がとてもまぶしく見えたのです。やがて別れの時がやってきました。ショウ様はべそをかき、見送るわたくしに約束を一つくださったのです」
そこで話を切ると、エミリーは最高の笑顔でこうきり結んだ。
「今度、このエスクードに来たとき、私に外の世界をみせてくれると」
おーい、祥君。城を一つ持ってる、ベッド代わりとか言ってたけどずいぶん話が違うんですけど…
「それで出発はいつ?」
エミリーがウキウキしような声で尋ねてくる。
なんなのだ、この流れは!?
「今日、今すぐと言いたいところだが…まだ兵士も大勢いるし、正面突破はキツイかな。夜陰に乗じて城をでて転送でひとっ飛びってところかな」
なぜだ。なぜ、刑務所からの脱出みたいな話になってきているのだ。
「えっ、えっ、正直に王様の許可をもらってってわけには行かないの?」
打ち合わせをする2人を制止するため、私は正攻法を提案してみた。
「相手はこの国の姫様だぜ、城下町にお忍びで行くのとは次元が違う。最悪死ぬ可能性だってあるわけだし、許可を出す理由がないよ。それに王位継承の話も残ってるし…許可は出ない。王位継承を押し付けられこの階層から永久に出られない。バッドエンド一直線だよ」
祥君の中では護衛を付けるって話を切り出した時、既にこの計画ができていたのか!? 全く、取り付く暇もなく城からの脱出が規定路線になっている。
「それにお姫様を城の外に連れ出すなんてのは王道中の王道クエストだろ」
あかんこの人、殺る気満々や…
読んで頂きありがとうございました。明日も25時ごろに投稿したいと思っています。よろしくお願いします。




