第28話 最強のNPCの護衛をつけると聞いていたが話が違う
エミリー・アブストラクト・エクシードと名乗った女は白ドレス、金髪ロング、黄金の瞳とどこからどうみてもお姫様と言うにふさわしい女性であった。
ただ一つドレスに剣さえつけていなければ…
「ショウ様、真澄様、このような場所で立ち話もなんですのでわたくしの部屋へ参りましょう」
「では宴の準備ができたら使いのものをよこす、エミリーくれぐれも粗相のないようにの」
「はい、お父様」
王様と別れた私達はエミリーの先導で彼女の部屋までやってきた。
「ふう、ようやく一息つけましたね。改めて、ようこそ、ショウ様。初めまして真澄様。それで、ショウ様、約束通りようやく、わたくしを外の世界につれていってくださるのですね」
「ああっ、その代わり宿代としてこの真澄さんの護衛についてもらうがな」
「もちろん、かまいませんわ。わたくしの命に代えて真澄様をお守りしますわ」
えっと話が見えないですけど、このお姫様を護衛NPCとして侍らすってこと!?
もっと機械的な使い魔とかを護衛につけてくれるのかと思ってた。それにしても、なんなんだ、約束って…
「あら、真澄様、そんなに心配しなくてもショウ様を取ったりはしませんよ、わたくしの一方的な片思いですから。ショウ様からこの国を襲った冥竜王ディベースの話は聞いておられませんか?」
「いや、聞いてないんでいちから教えてもらうと助かるんだが」
「分かりました、ことの起こりは数百年前、我がエクシード王国の辺境に冥竜王ディベースが住み着いたことから始まります。冥竜王ディベースはたいへん強く、たまに里を襲っては傍若無人を繰り返し王国の民を苦しめておりました。そこでエクシードの当時の王と悪龍との間で契約の神を仲介人とした取り決めがなされたのです。10年に1度、若く美しい娘を悪龍の前に差し出す。その娘が差し出し続ける限り冥竜王ディベースは自分のテリトリーから外へ出ないという契約でした。私がまだ、6歳の頃でしたか仲がよく、よく遊んでくれた村の娘がこの人柱に選ばれました。私は子供ながらに思いました。民を守るために国があるというのに民を犠牲にすることで国を生かしている。こんなことは間違っている。もちろんエクシード王国も手をこまねいていたわけではなく剣王を始めとする多くの優秀な人材を集め悪龍の元に送り込みましたがことごとく失敗してしまいました。私、自身もこの矛盾に耐え切れず招集された剣王の下で必死に剣技を学び、結果、剣王の称号を頂きましたが所詮は人の身、人の限界を超えることができませんでした。それならばせめて次代の王国がこの悪習を断つべく鋭意努力し、いつの日かあの悪龍を退ける術を見つけるため、エクシード王国をさらなる臥薪嘗胆つき落とすべく私はこの身を差し出そうと決意したのです」
朗々と吟じるようにエミリーが語り身振り手振りでアクションする。まるで一人宝塚劇場のようだ。
「人柱の儀が終わり、後は冥龍王ディベースに食べられるのを待つだけ、なるほど走馬灯というものは本当にあるものだと感心していた時です。黒衣、黒色のマントをまとった1人の青年が突然わたくしの前に現れ悪龍と戦いを始めたではありませんか。しかも、剣王でわたくしですら見たことのない剣技の数々、高位の魔法使いが長時間詠唱して初めて使える大規模魔法を無詠唱、連射で扱い、さらにS級カードを使こなした戦闘まで行える。冥龍王ディベースと互角以上の戦闘を続け、数百年誰も成し遂げたことのない冥竜王討伐を成功させたではありませんか」
エミリーがまるでクライマックスを演じる役者のようにオーバーアクションを取りながら声を張る。
「さらにさらに、その冥竜王ディベースと盟約まで結び、冥竜王の力を自分のものにまでしたのです」
読んで頂きありがとうございました。また、長い会話劇になってしまった…
明日も多分、25時すぎに投稿すると思います。よろしくお願いします。




