第279話 春日井真澄VS聖竜皇ディオクレティアヌス①
ゲート現象。祥君と渚と仲良くなったきっかけを作った事件だが一般プレイヤーが殆どの第1階層に第5階層などの超強力な敵が雪崩れこんでくる現象のことだ。レベルの弱いプレイヤーは当然、殺されてしまい、同時に第1階層にいるNPCも殺されてしまう。どちらかと言えばプレイヤーはただ殺されてデスペナルティーを支払うだけで済むがNPCは殺されてしまうとこれまで蓄積した記憶を全て失い初期状態に戻ってしまう。セカンドワールドオンラインが世に出てから数十年、その間に蓄えた記憶が全て消えてしまうのだ。それはあまりにも大きな損失だろう。
あの時は渚の要請に応え、祥君の活躍でなんとか事なきを得た。事件は解決したが首謀者は未だ謎のままだ。あの時は、ゲート現象を引き起こした人間にひどく嫌悪したものだ…
それが回り回って私が引き起こすことになったとは因果なものだ。
「聖竜皇ディオクレティアヌスは冥竜王と違って肉体を持った生きた存在なの。私は教団のメンバーでパーティーを組み死闘の末、ディオクレティアヌスを半殺しにしたわ。その状態から【聖力】を断ち、単語帳で思考を麻痺させ、意識を誘導することで無理矢理操作してたの。あの召喚の魔法陣には竜の出し入れだけでなく、ディオクレティアヌスの【聖力】の供給を断つ式も埋め込まれていたの。第1階層に漂う【聖力】を吸収し、本来の力を取りもどしたディオクレティアヌスは肉体を持っているのでずっと現界したまま。私を殺しても存在し続ける。肉体を持って普通に存在してるからね。普通に強いくて、知性も高い。そして、プライドはとびきり高い。それが人間如きに半殺しにされ、操作された分かり、怒り狂ってる。私を八つ裂きにするのはもちろん私に関連する人間を皆殺しにする。教団の人間は当然だし、私の出身階層である第1階層も全てがターゲットでしょうね」
私が攻撃を止めたのをチャンスと見たのかヴァレンシュタインはいかに聖竜皇ディオクレティアヌスが凄いかを熱弁してくる。
そんな物騒なモノを操作しようと考えるな。制御が破られた時の安全対策ぐらい仕込んでおけ!
「頭がいいのに皆殺しってどうして何ですか?」
私は素っ頓狂な疑問をヴァレンシュタインに投げかける。
この状況、頭を整理するためにも一旦、どうでもいい疑問を投げかけ心を落ち着かせよう。
「頭がいいからでしょうね。復讐をキッチリやっておけば、周りは勝手にびびってくれて後が楽でしょう。私の故郷である第1階層の人間を皆殺しにすれば流石に帰ってくれるとは思うけど、このままじゃ何人死ぬかも分からない~」
ヴァレンシュタインも現実逃避してるのだろうか? 受け答えが雑になってきた。
「そういう殺人鬼みたいな竜を元にいた場所に戻せないと? そして、制御も完全に離れていると?」
呆れを通して詰問調になってくる。想像以上に事態は悪い。
「はい、プレイヤーキルマイスターの相方にそう言われると違和感が凄いけど、実際はその通りだね」
「私としてはそんな思慮の無い殺人鬼が自分のホームタウンを襲うなんて事案は遠慮したいです。それに関係の無い教団の人間を皆殺しっていうのも目覚めが悪いですね」
「余裕そうだけど、そもそも完全状態のディオクレティアヌスから逃げるのも一苦労なのよ。強制ログアウトしても再ログイン場所で待ってるぐらいの知性をあいつは持ってるわよ」
「格好悪いから、理由付けしただけです! というわけで、ヴァレンシュタインさん、一時休戦、共闘、私達2人でアイツを倒すってことでいいですか?」
「もちろん、異議なし。頼りにしてるわよ、真澄ちゃん」
読んで頂きありがとうございました。明日は休みなんで投稿時間はランダムですがなんとか頑張って投稿継続したいと思っています。
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