第27話 チートその⑤最強のNPCの護衛の正体を教えてあげよう
「ささっ、このような屋外ではなんの歓待もできませぬ、まずは城内にお入り下さい」
王、自ら案内を務め、私達を城内に迎え入れていく。
王様が城下までやってきて、進んで案内をするとはどれだけVIP待遇なんだ。
「いえ、王様、今日は王位継承を受けるためにきたわけではなく、エミリー姫に話があったためお伺いしたのです」
祥君はせっかく先導して案内してくれる王様に対してバッサリと自分の用件を切り出した。
「エミリーにか…まあ、かまわぬがせっかくきてくれたのじゃ、まずは話だけでも聞いてくれんかの」
まるで保険の営業のように王位継承について話す。
王様、やはりNPCだけあって自身の優先目的に忠実なようだ。
これまでNPCとそこまで深く議論したことはないが、やはりこのあたりがAIの限界なのだろう。
「では、宴や王位継承についての話はまた、明日お聞きするということで…まずはエミリー姫にお会いしたいのですが…」
祥君はそんなNPCのロールプレイングにもめげることなく、淡々と要求を伝える。
正直、このやりとり必要なのだろうか。
「ふむ、それほど熱心なら仕方がないか…確かにエミリーもずっとショウ殿に会いたがっておったしの~宴の準備もあることじゃしの~ではまず、エミリーに相手をさせるか」
さしもの王様もプレイヤーにここまで実直なもの言いをされては譲るしか選択肢がないようだ。
ようやく、次の展開に移った。
「これ、誰かエミリーを貴賓室に呼んでまいれ」
「その必要はありませんわ、お父様」
背後から、嫋やかな声が聞こえた。
声だけでもその人間の清涼さが分かる。
そんな美しい声だった。
「おおっ、エミリー、お主も待ちきれずに来ておったか」
「ええっ、お父様ったら、なかなか呼んで頂けませんもの。我慢できず、自分でやってきてしまいましたわ」
僅かな茶気と気恥ずかしさが混ざった表情で彼女は私達に声をかける。
「お久しぶりです、ショウ様。そちらの方は従者ですか?」
「あっ、えっと春日井真澄と申します。一応、彼とギルドを組んでいます」
見惚れるような佇まいに一瞬、我を忘れてしまう。
美しいという表現はこういった人種のために存在するのだろう。
凡人である私には、ド・ノーマルな返事をするのがやっとだった。
「私はエミリー・アブストラクト・エクシード。この国の第一王姫です」
「真澄さん、彼女が言ってた剣王だ。巷じゃ【剣王姫】って呼ばれている」
そう祥君はドヤ顔で彼女を紹介してくれた。
読んで頂きありがとうございました。明日も25時投稿で頑張りたいと思っています。
よろしくお願いします。




