第26話 チートその④祥君の人気について教えてあげよう
「単独で第5階層まで下りてプレイしてたとき、なんか偶然、裏クエストみたいなのにひっかかったんだ。それで、たぶんこの国に来たプレイヤーはオレ1人なんじゃないかな」
道すがら祥君が城を手に入れた経緯を説明してくれる。
「その裏クエストを1番最初にクリアしたから王位継承権をもらえたみたいなんだ」
私達は祥君の転送道具で第5層まで来ていた。
祥君からそんなふうに城を手に入れた経緯は聞いていたがまさかこれほどの規模の城だとは思わなかった。
目の前にはやたら豪華な城がそびえたち、後ろには城下町が広がっていた。
彼は本当にクエストの報酬で国を手に入れていたようだ。
強大な城門の前には槍を構えた兵士が二人おり、その内の年配の方が祥君を見て声をかけてきた。
「おおっ、あなた様はショウ殿ではありませんか!!! よくこられたな」
年配の男は心底嬉しそうな声で歓迎する。とても仕事で歓迎しているようには思えない。
心からの言葉だと分かった。
「おい、フレディック、お主は至急、詰め所によって皆に報告。その足で王に謁見し、ショウ殿の来訪をお伝えするのじゃ」
年配の方の兵士が若い兵士にそう命令した。
「分かりました、では、ショウ様、お客人、ひとまず失礼して」
フレディックと呼ばれた門兵は私達にそう挨拶して足早に駆けていった。
「ショウ様だ、ショウ様がいらしたぞ~救国の英雄の凱旋だ~冥龍王撃退の英雄が帰ってこられたぞ~」
フレディックの大きな声がここまで聞こえる。
その声にはまるで澱みがなく、心の底から祥君のことを歓迎しているのが分かった。
「本当だ、ショウ様だ。ショウ様~」
その証拠に、フレディックの報を聞いた人間は我も我もと祥君に向かって声をかけてくる。
皆、心からの歓迎している。
兵士だけでない、おっさんから子供、メイドに官僚、老若男女、全ての人間が祥君の来訪を喜んでいた。
「いやはや、ショウ殿来られるなら来られると連絡を頂ければ皆で宴の準備をして待っておりましたものを…」
祥君は今、リトフスクと名乗った年配の兵士と雑談をしている。
あまりの歓待ぶりにリトフスクが気をきかせ、皆に解散を指示したのだ。
一方の私はずっと手持ちぶたさだ。
城のほうを眺めればそこらじゅうの窓からあらゆる人間が興味深げにこちらを見ている。
とても、祥君を置いて自由行動なんてできやしない。
うんっ!?
なんか城門の方をよく見ると大勢の供をつれた恰幅のいいおっさんが近づいてくる。
頭上に輝く冠はどう考えても王冠だ。
まさか、あれって…
恰幅のいいおっさんが祥君の前に立つと、周りの供も門兵も皆、膝をついて王と祥君を仰ぎ見る。
うわっ、これって私は膝をつかないでいいのだろうか???
「ショウ殿、よく参られた。エクシード王国臣下一同、次代の王である、あなた様の入城を歓迎いたしますぞ」
王冠をつけたおっさんは予想通りこの国の王様だった。
読んで頂きありがとうございました。明日も25時すぎに投稿したいと思っています。