第257話 最初の一歩は拉致から始めます㉗
残りのHPは約245…
ハイランカーは例外なく【HP自動回復】を修得している。長く喋ったおかげでじわじわ回復してきてはいるがまだまだ雀の涙だ。
この敵を相手に戦闘中の回復など考えるだけ愚かだ。
私達のレベルは拮抗している。向こうの被害も甚大だ。リグヴェーダは当然私と同じHPしか無い。先程の自爆まがいのカード発動だって奇跡だ。利き腕を失い、これだけHPが減れば、もはやカードの発動も不可能だろう。
プランタジネットも【翠嵐劫火炎熱斬】の直撃を受けている。回復もせず、戦闘に出てくるなど本来は不可能なのだ。
どちらも攻撃を当てさえすれば一太刀で終わる。
私には【朱気の鎧2】もある。2度攻撃を受けてもまだ、大丈夫だ。1対2といえど、勝機はこちらにある。
大丈夫だ。落ち着け。
乱れる呼吸を整えるため、大きく息を吸い、吐く。
よし、落ち着いた。
プランタジネットは魔法攻撃が決定的な隙を作ると警戒しているのだろうか。杖を逆手に持ち、腰を落とし、始めから【棒術】の構えを取っている。
ダメージを身代わりにしてくれる【朱気の鎧】だが、正確な性能はよく分からない。超威力の攻撃だと守りきれず、ダメージを通してくる可能性も有る。
不確定な能力だ。頼り過ぎないようにしなければ。
「【捨身他生の儀】」
プランタジネットはそう呟くと、突如、自分の杖で自分の喉をついた。
なんだ!? どういうつもりだ?
そうか、これは!
剣術にもある、【自己犠牲技】か…【棒術】にもあったのか…
あえて自分のHPを10まで減らす代わりに爆発的に攻撃力を上げる、捨て身のスキル。
プランタジネットはこれで攻撃力を底上げし、私の【朱気の鎧2】を攻略する気だ。
そう思い、プランタジネットの目を見ればそうとは違うと分かる。あれはもっと深い覚悟をした人間の目だ。
【朱気の鎧2】が身代わりのスキルであるということは先程の戦闘で理解できているはずだ。ならば、緩い攻撃でも2度当てれば【朱気の鎧】は消滅する。
今、【捨身他生の儀】を使ったのは自分の精神を背水の陣にまで持って行き、極限まで神経を研ぎ澄ませているのか。
ならばこちらも、2度チャンスが有るなどとは思わず、一太刀で決めねば。
「【三段斬り改】」
間合いを詰め、先手を取ったのは私だった。
剣王グロスとの戦闘で修得したエクシード流の固有技! 三段斬りの応用だ。
普通の【三段斬り】より、さらに速く、鋭い! 着弾位置のコントロールもできる。頭部、右肩、左肩を選択し、同時攻撃!
しかし、プランタジネットはシステムによって強化された私の剣を悉く弾く。
お前、魔法使いだろう!
心の中で突っ込みを入れるが【スキル】を使った後に生じる僅かな技後硬直のせいで動けない。
「【弐王身破砕!」
超高速の二連撃が放たれる。技後硬直から解放された私は一撃は剣士で意地で止める。しかし、もう一撃は不可能。
早くも【朱気の鎧2】が剥がれ落ちてしまう。
戦術を失敗した。小手先の技で勝利を掴むのは不可能。手持ちの最大最強の必殺技で勝負しなければ!
「雷滅翠嵐劫火炎熱斬」
制御には成功した! 雷と嵐と炎の三重制御!
自身へのバックファイヤーだけで【朱気の鎧】は消失する。余波だけでも凄まじい威力だ。これならば!!!
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