第251話 最初の一歩は拉致から始めます㉑
カスティリヤは私が突如、二刀流を構成したことに驚き攻撃を止めている。
しかも、左右の剣の長さが違う変則二刀流である。
躊躇してくれるとはありがたい。やはり、後の先を取るなど私の性に合わない。左手の【オーラソード】も気を抜くと消失しそうである。時間が無い。行かせてもらう!
初めての二刀流に型など無い。荒れ狂う鷹のように両腕を翼のように広げ右腕の【バスターソード惨式】を渾身の力で振り下ろす。
カスティリヤは警戒しているのだろう。かなり早い段階で、左後方に大きく跳んで避けた。
愚かな!
【オーラソード】の刀身を伸ばすとカスティリヤの左肩に直撃する。
【オーラソード】は【剣気】の剣。形など在って無いのだ。
但し、私の【剣気】の総量は少ない。本来であればこの穴を10メートルも広げれば勝負はついたのだろうが伸ばした分、刀身が細くなり人指し指程度の穴しか開けられなかった。
しかし、土壇場で作りだした【オーラソード】だが威力は十分だ。
カスティリヤは左肩を押さえ、苦しそうにしているが騙されない。異界人に痛みは無い。左肩に穴を開けた程度で戦意喪失するほどやわな相手では無いだろう。
再び右手の【バスターソード惨式】でその首を狙う。
今度は右腕に装着された手甲で捌かれた。
そんな技術も持っているのか!?
左手の【オーラソード】で迎撃しようとするがそれよりも早く痛烈な一撃が腹部を襲う。
「ぐっ!?」
先程より、早く重い拳だ。まだ、実力が上がるのか!?
「烈風連十三撃」
引き剥がせずにいると目にも止まらない連続攻撃を喰らう。剣を振るうがことごとく躱され、引き剥がせない。
何故だ!!
二刀流にしたことで一つ一つの動作が遅くなっているのか!?
なんとか引き剥がそうと後方に大きく飛び距離を開けるが瞬時に距離を詰められ私は何の対応もできない。
「烈風乃一縋!」
渾身の一撃を喰らい、無様に膝を付く。カスティリヤは今度は見逃さずトドメを刺そうとさらに間合いを詰めてくる。
ダメだ。ここであの一撃をもらったら全てが終わる。私はここで倒れる訳にはいかないのだ!
私は物心ついたころから一緒に育ってきた【バスターソード惨式】から手を離し、【オーラソード】で迎撃する。
エクシード流剣王術の型通り両手で放ったその一撃は満身創痍の身で出せる苦し紛れの一撃でしかなった。
しかし、その凡庸な一撃がカスティリヤを三度驚せたのは間違いない。カスティリヤは大きく間合いを取って躱した。
今の一撃!? なんの技工も伴わない平凡な一撃だったが間違いなく模擬神速だった。
そうか! 【バスターソード惨式】の重量はおよそ500キロ。対して【オーラソード】の重量はゼロ。この重量差が模擬神速を可能にしたのか!
これならば! 私はカスティリヤに対して無心で剣を振るう。
カスティリヤも華麗なフットワークで見事な回避を見せるが私の剣速は次第に上がってきている。【オーラソード】の刀身にもようやく慣れてきた。
一方、カスティリヤは防戦一方で回避に全神経を集中させている。その顔にはもはや一切の余裕が無かった。
私が振り、カスティリヤが躱す。
私が撃ち、カスティリヤが避ける。
私が一閃を放ち、カスティリヤが回避する。
私が斬り落とし、カスティリヤが手甲で捌く。
永劫にも思えた剣交は不意に終わりを告げた。
私の生涯最速の一閃を持って終焉に導いたのだ。
それは私の一閃が模擬神速すらも超え、神速に届いた瞬間であった。
こうして私はついにカスティリヤを倒したのだった。
読んで頂きありがとうございました。一応、休みなんで変な時間になるかもしれませんが明日の投稿も頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あれば何でもお待ちしております。
皆様のポチっとが私の創作の『知り合いにコーヒー牛乳を頂いた。風呂あがりに飲もうと思ったら蓋の部分に賞味期限が書かれていた。1月1日が賞味期限だった…私はそっとシンクに中身を捨てた。コーヒー牛乳の甘い香りがなぜか悲しみを誘った…』(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。




