第250話 最初の一歩は拉致から始めます⑳
自分がどうやって攻撃を当てるかばかりに気を取られ視野が狭くなっていたのかもしれない。
煮詰まったときは別の視点から物事を考えるのがベストだ。
それにしても、先程からいいようにボコスカ殴られているな。
そんなに私は隙だらけなのか?
真澄様との合流を急ぐあまり、先の先を取る戦いをするから躱され隙を突かれているのかもしれない。
あえて、待ちの姿勢を見せて攻撃の隙を窺う。
カスティリヤは私が攻めあぐねていることに気付きグイグイと突出してくる。
私はそれに全神経を集中させながらカスティリヤを観察する。
まずその動きが本当に高速だ。
しかも、武器を持っていないから、仕草なのか攻撃の予備動作なのかも判別が付かない。
防御に徹しても気付いた瞬間には拳の間合いに入られ、気付けば攻撃をもらっている。
高威力の必殺技を出してきていないのが唯一の救いだがそんなものを受けたら真っ先に沈む。
そもそもエクシード流は冥竜王の討伐を目的とした剣。
巨竜相手に防御を前提に戦えば即死だ。
一撃、二撃受けて死んでいなければ儲けもの。
自らを『矢』であると考え、冥竜王の攻撃が放たれる前に生涯最高の一撃を放つ。
巨竜の一撃に対して人間の防御など無意味なのだ。
そういう認識で戦ってきた。
実際、私も数年前の冥竜王戦で二撃受けてしまい、そこで初めて撤退を考えた。
三撃目を受けていたら死んでいただろう。
よって、我々は防御の研究など殆どしていない。いかにして高威力の攻撃を作り出し殺すかを研究してきた流派なのだ。
しかし、それが仇になった。巨竜の攻撃を躱すのとカスティリヤの高速の一撃を躱すのとでは次元が違う。冥竜王を10倍速にしてもカスティリヤの方が早い。
こんな時、ショウ様ならどうするか。真澄様ならどうするか。
ショウ様ならカスティリヤよりさらに速く、鋭く動き実力で倒すだろう。実際、あの方ほどの身のこなしを持っている人間など見たことがない。カスティリヤなど下位互換にすぎないのだ。
ならば、真澄様ならどうだろうか!? 真澄様なら思いも付かない奇想天外な方法で戦うだろう。それはどんな方法だろうか。
その時、私は御二方の姿に後光が差したのが見えた。間違いなく。光明が見えたのだ。
右手に愛刀の【バスターソード惨式】、左手に【剣気】を集中させる。
黒佐賀師匠との特訓のおかげで【銀気】は修得できた。そして、以前から無意識のうちに発現していた【剣気】の操作方法も習った。
【剣気】の発現は成功していた。後は出力のアップと操作次第で私の剣は何倍にも強くなると助言を頂いたのだ。
以来、特訓を重ねある程度は操作もできるようになった。私は今まで初歩的な【威力強化】にリソースを割いていた。
しかし、今、数段階行程をふっ飛ばし【剣気】だけの剣、【オーラソード】を作る。
先程からの模擬神速といい、限界以上に精神を酷使し、脳が焼き切れそうである。
しかし、ここで倒れる訳にはいかない。なんとしても真澄様に加勢し、ヴァレンシュタインという異界人だけでなく、カスティリヤやリヒァルトシュトラウスを、この教団全ての人を救いたいのだ。
真澄様なら必ずそれを達成される!
目の奥で火花がチラつきながらもなんとか構成を終える。
できた!
大きさは普通のロングソード程度、私の愛刀【バスターソード惨式】の大きさには遠く及ばないがなんとか形にすることができた。
【剣気】だけで構成した剣を作る。これが私が閃いた奇想天外な策だ。
二刀流などもちろん初めてだ。一度に両手で剣を持つということすら初めてかもしれない。
エクシード流上級者が使うバスターソードは重い。常人が片手で振えるものではないからだ。
剣気で剣を作ることも初めてなら二刀流も初めて、何もかもが初めて尽くしだ。
しかし、今、この目の前の強者を倒すにはこれしかない!
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