第249話 最初の一歩は拉致から始めます⑲
エクシード流剣王技【二虎四牙の構え】
剣を腰溜めからやや後方に構え、自身の身体で隠す。
そして、左手で柄を握り、右手は拳を握る。
この技はお師様である剣王グロスから学んだものではない。お師様もこの構えを修得することはできなかったのだ。お師様の師匠である先代が得意とした必殺技で、お師様からの口伝と先代の残した書物を頼りに見様見真似で再現している。
この必殺技の特徴は多段階の剣撃だ。振り下ろしの瞬間、右拳で柄を叩き剣速に変化を加える。達人のそれは異次元の剣速を誇るという。常人であれば多段階の剣速となり相手の剣士の意表を突くことができるという。
冥竜王相手にはあまり意味のない攻撃なので廃れてしまったがこの土壇場で思い出すことができた。 元々、ロンバルディア剣王技の一つだったのだろう。
唯一の欠点は素人が真似をすると威力も速度も落ち、なんとも中途半端な一撃になるとのことだ。だが必殺技の要諦は見えている。今の私なら失敗することは無いだろう。
覚悟を決め、私がカスティリヤの元に駆けると向こうも間合いを詰めてきた。もはや、守るべきリヒァルトシュトラウスはいないのだ。当然の帰結である。
私の剣域に入ってきたので【二虎四牙の一振り】を放つ!
剣速の多段階変化は成功したがそれすらもカスティリヤは余裕で躱す。返す刀で逆袈裟に一刀を放つが先程の模擬神速には及ばない。
まだ、集中が足りないのだ。
またも楽々と躱され、私の間合いを侵される。
「【飛天三閃】」
高速の拳が三発、腹部に刺さる。どうやら、足止めに徹していたというのはハッタリではないらしい。
ここで、膝をついては畳み掛けられる。これほどの敵に技後硬直などあるはずが無い。痛みを気合で誤魔化し剣を振るう。しかし、こんな、なまくらではとても当てることなどとても不可能だ。
余裕を持って躱され、剣撃が致命にならない絶妙の間合いを維持している。
こんな精神状態では模擬神速に入るなど不可能だ。
苦し紛れに私は真横に向かって走り出し、あえて間合いを大きく取る。
カスティリヤも追ってきている。
予備動作なく、瞬時に止まり、一閃を放つ。しかし、こんな不意打ちが通じる訳が無い。楽々と躱され、その隙に頬に正拳突きをもらう。
ダメだ。先程のように回避動作だけに徹してくれなければ、模擬神速は出せない。
初撃で模擬神速を出すには雑念が多すぎる。どうすればいいのだ。
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