第248話 最初の一歩は拉致から始めます⑱
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良かった。イチかバチかの賭けだったが【銀気】がなんとか発現しリヒァルトシュトラウスを無効化できた。
回復して、リヒァルトシュトラウスは一層元気になったようだ。後ろから罵詈雑言を投げてくるのは気に入らないがそこは外野のヤジだと考え努めて無視する。
「さっき高速剣撃は戦闘中に開発したのか?」
あまりしゃべらないであろうカスティリヤが声をかけてきた。呼吸を整えるためにもここは応じておこう。
「ええっ、どうすればあなたのフットワークを崩せるか考えて」
「馬鹿げてる。スペックの差なのか? NPXCの可能性? チートじゃん。あんなの」
まるで親の敵を見るかのような目でカスティリヤはそう言った。
「チートの意味がズルいということなら当てはまりません。私は自身の極限を使って戦いましたし、代償も払っています。これはショウ様との戦闘の、いえ、今まで私が生きてきたことの集大成です」
「なるほどな。失礼な発言は撤回するよ。けど、こっちも【聖女】の特性をほぼ全部捨ててまで【拳闘士】をやってんだ。カチコミ入れてきたやつなんかに負けるわけにはいかねえよ。ヴァレンシュタインは私達の同志だ。教団員は必ず教団員を守る。あいつを売るなんて論外だ」
「そんなものは小物判断です。捨てなさい」
「なに!?」
「確かに真澄様がおられない場合はあなた方の判断が正しいでしょう。ですが、今は真澄様がいらしているのです。安心して真澄様に全てをまかせなさい。あの方が全てを解決してくださいます」
「たかが一介のプレイヤーだろう。それにただの高校生だって聞いてるぜ。そんなやつに私らの気持ちが…」
カスティリヤが言い終わるより先に私は高らかに宣言する。ダメだ。ダメだ。彼女達はまるで分かっていない。
「それは真澄様を理解していない小人の発想。真澄様は世界のみならず、時代を、地球をも変える人間なのですから」
私がそう言うと唖然としたようにカスティリヤが口を閉じた。後ろのリヒァルトシュトラウスまでもが言葉を失っていた。
「まあ、今更、言葉による説得は無粋ですね。私もあなたとの決着を付けたいですし…」
腰を落とし左足を前に出し身体を右斜めに向け、後方に剣を構え、自身の身体で剣を隠す。エクシード流剣王技【二虎四牙の構え】を取りカスティリヤを見る。彼女も私の初めて出した構えに警戒している。
「こっちも足止め中心で積極的には攻めて無いんだぜ」
ようやくカスティリヤがいつもの調子を取り戻し、憎まれ口を叩いてくる。私はこの好敵手に対してあくまでも正々堂々と決着を付けたいのだ。
「では互いの全身全霊をかけて」
「「勝負」」
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