第227話 全てゼロからやり直します⑦
「はっ!? 何、馬鹿なこと言ってるの? あなたが私の人生に責任でも取ってくれるっていうの?」
水無瀬さんは間の抜けた顔をしていた。いい気味だ。ようやく私のターンに入れる。
「責任は取らない。その腐った性根を叩き直すだけ」
「私の人生は詰んでるのよ。姉は借金作って頭のおかしな宗教団体に入るし、父と母は借金作って蒸発したわ。今は成り上がる前、たまたま近所に住んでた田脳村とかいいう頭のおかしな経営者の情婦兼番頭よ。働いても働いても給料は全て、借金を返すために無くなるし生きていてもなんの楽しみもなければ展望も無い。こんな人生になんの価値があるっていうのよ」
「ならまず、お姉さんを奪還するわ」
「はあ??? あなたにそんな力があるとは思えないわ」
「私には無くても伝手なら色々ある。なにせ私はセカンドワールドオンライン最大最恐のプレイヤーキルマイスターの相棒なのよ。不可能なことなんて何もないわ」
「何で? 何で? 赤の他人のあなたがそこまでするのよ」
「私が私であるためにそれが必要だからよ」
「人生を詰んでる、だから捨て鉢に生きているなんて言うけど、そんなの嘘よ。教室では美人のお姉さんをちゃんと演じきれているし、バイト先でも信用がある。人生を投げてる人間ならもっと自暴自棄に生きるはずよ。お客さんから信頼を勝ち取り社員からも信用を得ている。それって他人からみればヨダレがでるほど羨ましい能力なのよ」
私なんか自分の部下に罵倒はされるは愛想はつかされるは散々だ。その上、迎えに来てくれた相方に暴言を吐いたりとまるで自制心を持っていない。それに比べれば水無瀬さんはなんと完成されていることか。
「詰んだからって投了なんてさせないわ。起死回生の策があるのに私達にはそれが見つけられないだけよ。なら、せめて私の力で見つけるだけの時間だけでも稼いでみせるわ」
「だから何度も言ってるけど、どうしてあなたがそこまでしてくれるのよ!」
「ショウ君もだけど、それが負け犬の考え方なのよ。省エネで人生生きてんじゃないわよ。どんだけ、無駄なことをするか! それが人生の豊かさ、面白さってもんよ!」
私はこんな日当たりの悪い学食の隅で何を啖呵を切ってるだろうか。思わず笑いたくなってくるが構わず続ける。
「けれど嫌だと言う人間にゴリ押しするほど厚顔無恥でも無いつもりよ。要は水無瀬さんの気持ち次第よ。お姉さんを奪還してそれで何が変わるかも未知数よ。奪還できるかどうかも分からないわ。それでもこのチャンスにあなたはお姉さんを奪還してほしいの? してほしくないの? 水無瀬さんの素直な気持ちを教えてよ」
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