第225話 全てゼロからやり直します⑤
水無瀬さんから快諾の返事をもらうと私は席に戻った。
授業中に水無瀬さんにどう話を切り出そうか考えておこうと思ったが考えがまとまらない。そして、こういう時はあっという間に昼になる。
「えっと、お弁当持ってきてないから学食行こっか」
4時間目が終わった後、水無瀬さんが私の席にやってきて、そう提案してくれた。私の方から誘ったのに機先を制せられた感じだ。確かにここではクラスメイトの視線が気になり落ち着かない。
その証拠に、私達2人が連れ立って教室から出て行こうとするだけでクラスメイトからちょっかいが入ってくる。
「あれ水無瀬さんと春日井さんが昼一緒なの? 珍しいね」
「トップ同士で何話すの~?」
「たまには私達と食べようよ」
ありがたいことに全方位から勧誘や軽口が飛んでくる。
「うっさい! たまには春日井と2人きりでデートしてみるのも面白いかなと思っただけだよ」
私には余裕が無く軽く流したが水無瀬さんは茶々を入れてくる観衆に律儀に応えている。こうして見ると彼女がクラスの人気者だということが改めて分かる。
教室からある程度、離れた途端、私達2人は終始無言になる。そういえば、ウチの学食は弁当の持ち込みがOKだった。流されるままに手ぶらでついてきたが、せっかく、朝、作ったのだから持ってくれば良かったと小さな後悔が鎌首をもたげる。まあ、夕飯にすればいいか。
私自身、お弁当派なので学食はほとんど利用したことがないが地方の公立高校の学食だ、メニューは貧弱で施設もボロい。それでもお昼時というだけあってなかなか混んでいた。
水無瀬さんは食券を売る自動販売機の前で指を顎に当てて悩んでいたので、私は先に親子丼を注文し、空いている席を探した。日当たりの悪い隅の席の一角が空いていたのでそこに座る。
テーブルにヤカンとコップが備え付けられており対面の席にお茶を入れ、席取りをしておく。親子丼など誰が作っても大差はないが目の前に作られたものが置いてあるとやはりお腹が鳴る。腹の虫と格闘しながら5分程待っただろうか、水無瀬さんがやってきた。
「ごめん、ごめん。あんま学食使わないからメニューを悩んじゃって~」
水無瀬さんはお盆の上にパウンドケーキとコーヒーを載せていた。学食のくせに何気にハイカラなモノを売っているが昼食にお菓子っていうのもどうなんだろう。私がそんな感想を抱いていると水無瀬さんが席につき一口も食べずに話を切り出してきた。
「それで話って? この間の件かな?」
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