第216話 春日井真澄VS清水谷祥⑤
そう叫ぶと祥君はひとっ飛びでイグナティウスの背後を取る。ヴァレンシュタインも私も反応できない。動きが早すぎて目で追えないのだ。どうしても行動がワンテンポ遅れてしまう。
「さっきは物理攻撃無効化フィールドだったから遅れを取ったがそうでなければ、お前などに!」
祥君は叫びながらブラッディーエクスカリバーを振り落とす。しかし、その剣はすんでのところで止められる。エミリーだ。
「ですがその分、私達がいます」
「エミリー! 邪魔だ! どけ!」
「いいえ、どきません。ショウ様。今のあなたは間違っています。身命を賭してお止めします」
唯一の前衛職のエミリーが反応してくれた。どちらも剣士としの技量はピカイチだ。目にも止まらぬ打ち合いが一呼吸のうちに為されるがどちらも一歩も引かない。
しかし、外目から見ればエミリーが不利なのは明らかだ。彼女は致命傷こそないものの、わずか数合、祥君と打ち合っただけで全身がボロボロだ。
「【共に戦う無神論者に宿る信仰者の炎】」
イグナティウスの杓杖から暖かな白い炎が放たれる。そうして、白い炎はエミリーを包み込むとみるみる傷が癒えていく。どうやら、彼女の能力は周囲にいるパーティーが一定以上の攻撃を受けると自動で回復させるスキルのようだ。
祥君はようやくそのカラクリに気付き大きく間合いをあけて後方へ跳ぶ。そこへすかさずエミリーが追撃をかける。
「ショウ様はなにがあっても真澄様と離れてはいけないのです」
何がエミリーをそこまで動かすのだろうか!? 凄まじい剣幕で祥君に迫る!
「エクシード流剣王技・乱れ撃聖剣!」
「冥桜乱数撃・部分極大!」
互いに致死にいたる高出力の連続攻撃を放つ。一手間違えれば即・絶命するほどの威力だ!
しかし、イグナティウスの回復圏内から外れたからだろう、エミリーの傷が回復しない。エミリーの技量では祥君の攻撃は捌ききれないのだ。祥君の攻撃を何発か受け回復の無いエミリーの動きがどんどん悪くなっている。
「ダメだよ。エミリー戻って!」
私の言葉にようやく我に返ったエミリーが大きく剣を払い、一瞬の間を作りイグナティウスの回復圏内まで戻ってくる。祥君の追撃も無かった。
エミリーと死闘を繰り広げているということになにかしらの戸惑いを感じているのではないかと思ったがそんなことは無く、彼の興味はイグナティウスと魔封礼師のお姉さんに向いているようだ。
「大したスキルだな! イグナティウス! さっきのバトルはオレを相手に手加減していたということか?」
「それほど緊迫した状況でもなかったですしね。手の内を晒すほどの相手でもなかったということですよ」
「言ってくれる」
読んで頂きありがとうございました。明日も投稿なんとか頑張ります。(もしかしたら投稿時間がずれるかもです)
ブックマーク、感想、評価、メッセージなんでもお待ちしております。
皆様のポチっとが私の創作のおでん(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。




