第213話 春日井真澄VS清水谷祥②
「ずいぶん、好き勝手にやってくれたわね、祥君」
崩れた本棚の向こうから悠々とやってきた祥君にそう声をかける。片手を腰にあて余裕たっぷりに言っているが本当は恐怖心で一杯だ。だって相手は祥君だよ。彼が負けるところなんてみたことも無いのに。
「追いかけっこはもう終わりか?」
相変わらず、普段と違い低い声で敵を見る目で語りかけてくる。彼の目には今の私はどう見えているんだろう。PKをするといいながらゲロ吐いて強制ログアウトされた不潔な女? PK一つ満足にできず、学校までサボった間抜け? 迎えにまで来てくれたのに当り散らす馬鹿女? 全て事実だ。だからといって君がPKするほどの女でもないだろう。それを思い知らせてやる。
「どうやらあなたは私を本気にさせたようね、祥君。殺るなら殺るで一撃で決めないと! プレイヤーキルマイスターの名が泣くわよ。そのふざけきった態度があなたを敗北させるのよ」
右腕に黄金気を濃縮させあの技のモーションに入る。あの技は貯めに数秒時間が必要なのだ。彼がノロノロと本棚から出てきてくれたおかげで貯めは完了してる。あとはぶっ放すだけだ。
「凄い圧縮率だが、あんたではオレに当てることはできんだろう」
私の右手の黄金気の充填具合を見て、彼はつまらないものを見たかのように言い放つ。やはり、以前、当たってくれたのはワザとだったか!
「当てる必要なんてないわ。こう使うんだから」
私はそう言い放つと膝を着き私の真下の地面に向けて解き放つ。
「黄金烈眞掌!」
私の叫びと同時に黄金色の光の束が直上に向けて放たれる。4階天井から10階天井まで巨大な穴が空く。祥君は私が何をしたいのか分からず動けずにいる。私の目的はこの穴だ。息を吸い、大声で彼女に助けを求める。
「ヴァレンシュタインさ~ん~彼が私を虐めるんです。助けて下さい~」
これは賭けだ。私の願望通り彼女が来てくれるとは限らない。彼女にはプレイヤーキルマイスターを敵に回す謂れはない。しかし、ヴァレンシュタインは私を助けてくれると言ってくれた。ならば信じて求めるのみだ。
期待した通り私がそう叫ぶと、【黄金烈眞掌】で空けた穴からヴァレンシュタインがひらりと降りてきた。
「真澄ちゃん。さっきは困ったらいつでも助けるって言ったけど、流石に昨日の今日すぎない? いや、さっきの今すぎないと言うべきかしら?」
いきなりクレームを入れてきた。しかし、戦うのは嫌ではないらしく、楽しそうに文句を言ってきてくれる。やはり、先ほどの言葉通りかなりの使い手なのだろう。
「けど、私が助けを求めたから助けてくれるんですよね」
「そりゃね~なんだか助けるというより利用されてる雰囲気があるけど」
こちらの目論見はお見通しか。その上でのってくれるとは珍妙な宗教に入ってはいるが優しい人だ。
「けど、私も勝てるかな~念のため先生も呼んどこ」
そう言うとヴァレンシュタインは服の中から護符を出し、なにかを召喚しようとしている。職業が召喚師なのかな。護符のようなものを地面に貼り付けると1人のプレイヤーが召喚された。とヴァレンシュタイン同じ服ではあるがなぜかところどころ服が焼き焦げている。白服のお姉さん2(焦)と名づけよう。
読んで頂きありがとうございました。明日もなんとか投稿できると思います。頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージなどあればお待ちしております。
皆様のポチっとが私の創作の超寒12月(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。




