第210話 初めてのPK(プレイヤーキル)実行から一夜明けて⑧
視界がここまで悪い中での精密狙撃、身体を焼く白い炎の総量が増えオレのHPがさらに早く減っていく。
早く決めないとこっちが時間切れでPKされてしまうな。あまり、手段を選んでいる暇もないか…
スマートな手段ではないが止むをえまい。いくつかあるプランの中からあまり、取りたくない選択肢を選び実行する。
ブラッディエクスカリバーを抜き、再びイグナティウスの下に接近し何の捻りもない一撃を放つ。
やすやすとイグナティウスの身体に激突するが当然のことながらダメージはゼロだ。
「はっ? 何の真似ですか? ここは物理攻撃無効化フィールドの中です。いなかる物理攻撃も私には効かない」
「ガ・エラ・ルーガ・エンテミィアス」
そうオレが魔法名を唱えると極大の炎をがオレ自身を焼く。オレの残り少ないHPが急速に減っていくがイグナティウスの顔も苦悶に歪む。炎が剣からイグナティウスの身体へと伝いダメージを与えているのだ。剣を伝導体にしてイグナティウスの身体に密着させているので魔法障壁も発動しない。
「自分で自分を焼くなど正気ですか!?」
また、耳障りな文句を言っている。戦闘中におしゃべりとはまだ、自分が劣勢に堕ちたとまだ理解できていないのか。その愚かさがお前を殺す。
「冥桜乱数撃・部分極大」
そう技名を叫びと、剣に伝った【ガ・エラ・ルーガ・エンテミィアス】の炎をイグナティウスの全身にくべる。一拍の間にイグナティウスの全身は火達磨と化す。
所詮は後衛、体術でオレから逃げ切れる訳がなく、また、HPも少ない。
こうしてイグナティウスはあっけなくオレに倒された。
オリジナル・スキルを持ったプレイヤーが万端の準備をして挑んできたのだ。もっと手こずると思ったがそうでもなかった。やはり、オリジナル・スキル持ちといえどピンキリか。
いや、いくらなんでも歯ごたえが無さ過ぎる。本当にPKできたのかも疑問だ。あの白の炎は切り札ではないのか!? 回復特化のプレイヤーなのか、別のスキルが奥の手に持っているのか…
いずれにしろ目の前の障害は取り除けた。今はこれでよしと考えよう。
「しかし、それにしても何の技量も無い力技で殺ってしまった。これじゃあ、難破津に笑われるな」
昔の相棒を思い出しオレは微笑する。まったくアイツとオレとではいつも戦闘後の環境が大違いだ。オレはいつもながらの惨澹たる様子に苦笑いする。畳は焼き焦げ、壁は煤だらけだ。
「しかも、カッとなってPKしてしまったがよく考えれば身体能力では圧倒してるんだから無視して次の階に行けばよかったのか…」
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