第208話 初めてのPK(プレイヤーキル)実行から一夜明けて⑥
納刀状態からの高速抜刀。【冥桜撃迅空撃・抜刀】。相手は後衛タイプと見た。ならばなにかデカイのを撃ってくる前にその首を刎ねる。
予備動作無しに高速で接近すると発動前の貯めを阻害されることもなく、防御姿勢を取ることもできずイグナティウスは直撃を受ける。
殺った。
しかし、イグナティウスはノーダメージ、逆にオレの身体は白い炎に包まれHPが急速に減っていく。
これは防御魔法【セルフ・バーニング】か!? ただのカウンター魔法でオレにダメージを通すほどの威力とは!? それに炎が白いだと!?
意図せぬ攻撃を喰らったため、オレは距離を取り戦術を再構築する。
「物理攻撃無効化フィールドです。ここは城ですよ。なにを下調べも無しに攻めてきてるんですか」
オレが燃えている姿が面白いのかイグナティウスは嘲笑しながらあっさりとネタ晴れしてきた。
くそう、この白い炎消えない。
「そしてその炎は私のオリジナル・スキル。【我が身に宿る揺るがざる信仰者の炎】です。私の信仰心によって威力が増減します。今のように異教徒から迷い人を守る等の状態になれば無類の強さを発揮しますがただの遊びで使うなら蟻一匹燃やせません」
オリジナル・スキルの所有者か! 物理攻撃無効化フィールドでこのレベルの敵に遭遇するとは! これはまずいかも…
「まあ、一度喰らいついたからにはあなたが絶命するまでは消えないでしょう。このシチュエーションならもう少し火力が上がってもよさそうなものですが思ったより火力が低いですね。やはり、我々があなたのお姉様のファンだからでしょうか」
「…」
「お姉様のことに触れられるとダンマリですか…もっとお話を聞いてみたいと思っていたのですが…我々は意外とあなたを買ってるんですよ。正確にはあなたのお姉様ですが…」
追撃してくるわけでもなくイグナティウスは燃え続けるオレを見ながら話を続ける。
「あなたのお姉様こそ、この世界の神だ。自らの意識をこの世界に沈め、ゴミ溜めのような現実世界から私達を新世界へ誘ってくれた、ノアだ。あの方がいなければ私達は今でもゴミ溜めの中で息すらできない芋虫として生きていた。この感謝の気持ちを一言お伝えしたかったのですが…」
イグナティウスは大仰に空に向かって感謝の祈りを捧げ、心酔しきったような表情で言ってくる。
なにが神だ。あの女は魔女だ。
「姉さんはそんな次元ででセカンドワールド・オンラインを作った訳じゃない」
あまりに愚かなことを言ってくるので思わず反論していた。この女イチイチ、オレの勘に触ることを言ってくる。
「おや、やっとしゃべってくれましたか。面白いですね。我が【全ての人類の永続ログインによる人工解脱教団】はずっと12賢人の情報を、特に【泣かない乙女】清水谷実礼の情報を中心に収集していますが非情に秘匿性が高くなかなか確度の高い情報が集まりません。やはり、あなたは実弟だけあってかなり深いレベルの情報をお持ちのようだ。あなたがプレイヤーキルマイスターなのも関係あるのですか? 【泣かない乙女】がこの世界を作った意味はなんなのですか? なぜ、彼女はフルダイブしているにも関わらず現界していないのですか? そうだ。あなたも我が教団に入りませんか? そうすれば我が教団のネットワークを使ってお姉様の行方を探せますよ」
馬鹿女がオレを燃やしながら馬鹿な発言を繰り返し来る。もう、十分だ。
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