第207話 初めてのPK(プレイヤーキル)実行から一夜明けて⑤
第1階層、プライベート空間。第1階層は現実世界を100%トレースして作ってあるが転送ポイントの先にある転送先の空間は各々、自由にカスタマイズして作ることができる。しかし、あくまでカスタマイズがメインでゼロから空間そのものを作るのには膨大な時間と手間がかかる。従って、これほどの規模の空間と建物を作るのには凄まじい量の費用がかかったことだろう。
オレの前にはコンクリート製のビルにところどころ城のパーツのようなものが引っ付いた近古折衷の10階建ての巨大な建物がそびえ立っていた。
なんてごつい建物だ。ここに真澄さんがいるのか…
建物の中に入り、【ギルド探知】で位置を特定。9階か。階段を探すとバックヤードの奥にあった。『関係者以外立ち入り禁止』とあったが構わず進む。
受付の女が声をかけてきた。甘ったるい匂いが勘に触る。【意識薄弱】の効果が発動されてるじゃないか。状態異常の効果はオートで遮断されるがオレに攻撃を仕掛けてきたことに腹が立つ。
イライラしたので剣を抜き威嚇する。こんな負け犬共、斬る価値も無い。
蜘蛛の子を散らすように周りにいた信者が逃げ、オレは先に進む。こんなところに一秒だって真澄さんをおいておけない。会ってどうするのか。PKでショックを受けてる彼女になんと声をかけるのか、プランは無かったがここにいるのは害悪だ。はっきりとそれだけは断言できた。
【全ての人類の永続ログインによる人工解脱教団】
カルト宗教としても有名だがギルドの中でもかなりの大手だ。なにせ信者は皆、熱心な廃人だ。ログイン時間が長いせいで必然的にギルドの平均レベルは高くなる。おまけにほとんどの信者がフルダイブカプセルを使った長期間ログインをするものだからそのログイン代を稼ぐのに余念がない。信者になると家とも家族とも切り離され全ての財産を教団に寄付し集団生活をするというやばいタイプのカルト教団だ。しかも、思想的にずいぶん狂った奴も多いという。最近、かなり高レベルのプレイヤーが出てきたという話も聞く。取り込まれる前に救い出さねば。
「お止まり下さい。プレイヤーキルマイスター殿」
2階に出るとフロア全体に畳が敷き詰められており、杓杖を持った白服の女がポツンと立っていた。
一目で高位レベルのプレイヤーだと分かる。
「かの殺戮中毒者が何用ですか? ここにはあなたがPKするに足るプレイヤーなどいないかと存じますが」
「相方がここに拉致られたって聞いたんで連れ戻しにきたんだ。真澄さんをさっさと帰せ」
「はて、拉致られたとはひどい。彼女は心を病み自らの意思でここに来たのです。今は私の弟子が説法・治療を行なっている最中です。邪魔はやめて頂きたいのですが…」
「それが迷惑だと言ってる。さっさと彼女を帰せ。邪魔をするなら押し通る」
「あなたに彼女を帰して彼女が楽になるとは思いませんが…この強引さが彼女を苦しめているのではないですか。ならば、彼女のためにもあなたには引いて頂く。十七聖女イグナティウス・ブラマンテ、微力ながらお相手いたしましょう」
「自分で聖女とか言う電波女とは関わりあいたくないが…」
「これは称号、二つ名です、プレイヤーキルマイスター。そして、現実世界の名などとうの昔に捨てました」
読んで頂きありがとうございました。明日も投稿頑張ります。
ブックマーク、感想、評価、メッセージ等あればなんでもお待ちしております。
皆様のポチっとが私の創作のグーグルマップ(意味不明)ですので何卒よろしくお願いします。




