第203話 初めてのPK(プレイヤーキル)実行から一夜明けて①
翌日、私はいつものように起床し、久しぶりの家族そろっての朝食を取る。
どうやら2人とも今日は夕方からの出勤らしい。久しぶりに朝から母が朝食を作ってくれた。
まあ、朝からうどんだったのはどうかと思うが…
父と母に『いってきます』と挨拶し家を出る。空は雲ひとつ無い青空でご飯は美味しかった。
しかし、これほど空がきれいだというのに私の心は晴れなかった。
今さらどの面さげて祥君と水無瀬さんに会えというのだ。祥君には自分も全てのプレイヤーを殺し尽くし最高のプレイヤーになると宣言したのにこの体たらく。そして、クラスメイトでバイトを紹介してくれた水無瀬さんはアバターをPKしたし、彼女の家族のドロドロまで覗いてしまった。
学校に近づくたびに憂鬱になる。いっそ、さぼろうか!?
今までの人生で一度もさぼりなんてした事が無かったが学校に行くのも残り数年、途中で風邪とかで何度も休んでるので皆勤賞には程遠い。学生のうち、やるなら今だ。
現実逃避からしぼりだされたアイデアだったがとてもいいアイデアに思えてきた。
しかし、家には親がいる。どこへ行こうか。商店街は顔が割れてるし…少し、遠出するか。
制服のままだがまあ、いいだろう。
念のため学校には風邪気味を理由に欠席の連絡を入れておこう。こういう時、親に入れてもらうほうがいいのだろうか!? まあ、もう高校生だし怪しまれないだろう。
電話に出た教師は事務的に担任に伝えると言ってくれた。特に怪しまれることも無かった。知らない教師だったのが幸いした。なんだが拍子抜けだ。この程度のことをびびっていたのか…
当てもなく、上りか下りかも確認せず電車に乗る。こういう時、定番だと海でも見にいくものだがあいにくとそこまでの手持ちはない。
3駅も乗れば電車の空気にも飽きてしまい、人の流れに乗って下車。
到着したのは近隣最大の街、北穣市だった。特に目的もなく、ブラブラと歩く。
考えてみればどのみち、お金が無いのだ。なんだかんだといっても帰りの電車賃は残しておかねばならない。どこにも寄れない。
そんなことを思いながら途中、コンビニによりジュースを買い、また目的のない散策を続ける。早くも飽きてきた。
最初は傷心のプチ旅行という感じだったが思った以上に学校をさぼるという行為は面白くない。誰かに見られるのではというドキドキ感はあるものの、見られたところでどうなのだというぐらい私の心は冷めていた。
ふと見上げると目の前に非常にカラフルな看板が立っていた。フルダイブ施設の看板だ。歩き続けて疲れてきた。人の目もやはり気になる。ログインして適当に時間を潰すか…
結局、時間を潰すとなるとセカンドワールド・オンラインになってしまうのか、私は…
残高を確認すると12時間パックの料金にギリギリ足りた。使用中のカプセルは密閉されており、未使用のカプセルは展開されていた。店舗は無人で使い方が分からなかったのでカプセルの側でウロウロしていると別の客が来て迷わずカプセルの中に入っていく。お金は後払いなのだろうか!?
意を決してカプセルの中に入るとほのかに涼しく、清潔に保たれていた。ちょうど顔の辺りにいまどき珍しい物理キーがあったので閉鎖を選択するとカプセルが閉じた。密閉状態になったことでチュートリアルが始まった。左手を固定台にのせると長期フルダイブ用の点滴を打つかと聞いてきたので慌てて下ろす。
やはり初めてなので使い勝手が分からない。
カプセルの中にインフィニット・ステーションが内臓されているのは知識として知っていたので携帯とカプセルをリンクさせ準備は完了。
「エンター・ザ・セカンドワールド」
昨日は強制ログアウトだったのでどこに出現するのかと気にはなっていたが設定空間に出た。とりあえず、変更したい設定などはなかったのですぐに設定空間を出ようとするとカプセル運営会社から引き落としの許可がきた。
なるほど、ここで支払いしないと設定空間をでれないのか。私が12時間パックの料金を支払うとようやく設定空間に出口が出現した。
全くよくできたシステムだ。
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