第199話 初めてのPK(プレイヤーキル)⑨
「なぜじゃ~あれほどの大口を叩いておきながら、なぜ死ぬんじゃ菟玖波~はよ蘇生してワシを守らんか! 菟玖波~こんな時のために穀潰しのお前らを雇ってやったんやぞ」
ガズナの容赦の無い戦いぶりに若干引いていた私だったがその声で我に返った。田脳村だった。そうそう、この男がターゲットだったんだ。
「なぜじゃ、なぜログアウトできんのじゃ。壊れたんか!?」
「【嘆き苦しむ死者達の墓標】のカードの効果だ。この部屋の人間はしばらくログアウトはできないよ。正確には、電源をぶっこぬけばできるけど。情報体はセカンドワールドオンラインの中に現界したままだ」
祥君はこれから死にゆく相手に懇切丁寧にログアウトできない理由を説明している。
「なんでじゃ。なんでワシがPKされなあかんのじゃ。ワシがなんかやったちゅうんか」
「オレ達は依頼PKでやってきた。オレ達がやってきた理由はあんたが一番良く分かってるんじゃないか」
「なんぼじゃ? なんぼで雇われたんじゃ。依頼料の倍出すで」
「生憎と金にはあまり興味がない」
「ワシは死ぬわけにはいかんのじゃ。保険にも入っておらんのじゃ。ワシほど収入があれば高額すぎて入れんのじゃ。この情報体が死んだら仕事にならへんやろ。またレベルアップなんて無駄な作業をやらなあかん。ワシの一時間はお前ら暇人の一時間とちゃうんや。ワシは一時間あったらどれだけ稼げると思っとるねん。なあ、頼む後生や。見逃してくれ」
田脳村は威厳もなにもかもかなぐり捨てて土下座で頼んでいる。とても複数の会社のオーナーとは思えない所業だ。なにか思っていたのと違う展開だ。『板垣死すとも自由は死なず』とまではいかなくても、もう少し礼節を持って情報体の死を受け入れることはできないものなのだろうか。
私は迷っていた。迷った目をして祥君達を見てしまった。
すると祥君は一太刀で田脳村を切り捨て彼を光の粒へと返した。
「まっ、なんの思い入れもない相手だからね。こんな相手に真澄さんの初めてをくれてやるのはもったいないさ」
ガズナはどこか不機嫌な顔で、私はなぜかほっとした顔で祥君を見ていた。
「さっ、帰ろうか。結構な物音立てたし、菟玖波がダメ元で応援を呼んだかもしれないからね」
その時、部屋の隅でドアの開く音がした。
「誰だ!」
祥君とガズナが瞬時に武器を展開し誰何する。
そこに立っていたのは私のクラスメイトにしてバイト先の上司でもある水無瀬さんだった。
「お義父さん。なにかあったの~シャワー越しにもけっこう大きな音がしたよ~」
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