第192話 初めてのPK(プレイヤーキル)②
「手はずをもういちど確認するよ」
私が柄にもなく緊張している姿を不安に思ったのか祥君がこれまで何度も話しあった段取りをもういちど繰り返してくれた。こういう緊張状態では独りでもの想いにふけるより他人に指示され、それに従ったほうがうまくいくものだ。
「田脳村竹田はそろそろ部屋から出てきて、会社に向かい社員に退勤許可を与えるはずだ。田脳村が出勤するまで社員は帰れないから絶対にここから出勤する。だからマンションから出て迎えの車に乗り込むまでの一瞬を狙う」
「第一目標は護衛。不意打ちでオレが一人殺るから真澄さんも一人殺って。3人になったところでオレの称号を告げたら護衛も普通はデスペナルティーを避けたいから逃げるだろう。逃げなければ返り討ち。まあ、あのレベルのプレイヤーに苦労はせんだろう。ガズナはサポート。臨機応変に立ち回って」
「あの質問。目撃者とかが出たらどうするの?」
私は手を上げ、祥君を先生に見立てて質問してみた。
「もちろん抹殺あるのみです」
祥君ではなく、ガズナが答えた。ガズナはなにを当たり前のことを聞くのだと呆れた顔をしている。祥君はそんな私達を見て苦笑いしていた。
「まあ、別にどっちでもいいよ。見られたからってどうなるものでもないしね」
「ショウ様は甘すぎます。生かしておけばショウ様の日常生活に支障がでる恐れがあります。疑わしきは殺し、プレイヤーキルマイスターの影に触れた者は1人残らず皆殺し。プレイヤーキルマイスターの伝説を聞くだけで死ぬぐらいの伝説がなくては。最多PK記録を取られてしまいますわよ」
「まあ、ガズナとはいつも議論になるけどそこらへんは永久に平行線だね。なんならガズナが最多PKの記録取っちゃいなよ。ガズナも随分な数をPKしてるでしょう。その在り方はもう立派な信念だ。いつまでもオレの二番煎じではいけないよ」
「ショウ様…」
ガズナはうっとりとした表情で祥君を見つめる。
「いつも言ってるけど結構前に悪食からは卒業したんだ。どれだけPKしたかよりもどんな相手をどうPKしたかに重点を置くようになったんだ。量より質だね。だから殺しの美学も遵守して、制限付きのPKをしてるだろう。縛りと美学があればPKという行為はより美しく輝くんだ」
なにやら祥君とガズナがPK談義で盛り上がってる。できれば『始めてでもできる初心者のためのPK講座』も開いてほしいが…
「けど、オレも悪食でプレイヤーキルマイスターの称号を取ったら悪食の必要性は認めるよ。100人や200人PKしたぐらいじゃ、渇きはなくならないよ。星の数ほどPKを繰り返してその行為に飽きたらガズナも実感を持ってオレの言うことが分かるようになるさ」
「分かりました、ショウ様! ガズナは大量殺人に邁進します。手始めにこの高層マンションの住人を皆殺しにするというのはどうでしょう」
「おいおい。ガズナは大規模破壊の術を持ってないだろう。むしろ、真澄さんの黄金気の方が大規模破壊に向いてるんだけどな~真澄さんならこの高層マンションを根こそぎ破壊することも可能だろ」
祥君はいじわるな顔でガズナは羨ましそうな目で私を見ていた。
私はまだ、1人もPKしてないんだぞ。最初が大量殺人とかハードルが高すぎるわ!
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