第190話 黄金気を修得した新米領主の私は依頼PKの話しを了承する
「ええとなんの話をしましょう? 早くしないと呪いが発動してしてしまう…」
これまで終始冷静だったガズナがオロオロと目を回している。よっぽど焦っているのか。どんな呪いなんだろう。
「依頼PKのターゲットの話をしますね。依頼PKのターゲットは田脳村竹田。複数の企業を経営する資産家ですね。常にレベル300前後のプレイヤーを3人から5人従えています。本人はレベル30前後で戦闘能力はまるでありません」
レベル300が3人から5人か…黄金気を覚えたけれどそれで勝てるのかな。祥君も自由参加で良いって言ってるしどうしようか。そんな凄腕の護衛が常時付いてるなら参加はするけど見学に徹しようかな。
「それとこれは奴隷であることから逸脱した意見ですがあなたはこのPKに参加したほうがいい。ショウ様の、いえ、プレイヤーキルマイスターの隣に立つ者として今ならその力を存分に発揮できるはずです」
私は意味が分からず黙っているとガズナは自分の発言を続ける。
「プレイヤーキルマイスターとは呪い名です。人の負の感情が呼び込んだ異形の称号。そしてPKとは怨みの竜巻です。暴虐無人に通り抜けなければならない。為政者や力持つ者に恐れを抱かせ、自らの行いを内省させる災厄」
どうやら祥君の奴隷兼情報屋といってもPKに対するスタンスは彼とは違うようだ。まるで祥君を神として崇めるように発言を続ける。
「ネブラスカやカンザスに好き放題言われて腹が立ちませんでしたか? アクィナスの無理解に失望しませんでしたか? その苦しみをPKという行為に昇華させて解き放てばいいのです。きっと汚い花火になるでしょう」
やはり先ほどの発言の通り私の側で隠形し私とネブラスカやカンザスとのやりとりを見ていたのか。
「この世界など所詮ゲームです。ネブラスカもカンザスもNPCです。あなたが思い悩む必要などどこにも無い」
ガズナはもはや自分の発言に陶酔しきった表情でなおも続ける。
「プレイヤーキルマイスターの隣に立つ者は洗練された醜さを持っていなければならない。むしろ、あんな口うるさい爺共をこそPKしてしまえばいいのです」
私はガズナの言っていることをほとんど理解できなかったが最後の一点だけは共感できた。
そうだ。なにをNPC如きに好き放題言われて黙って耐えているんだろう。あんなやつらPKしてしまい後は恐怖政治で縛ればいいだけじゃないか。逆らう奴は皆殺し。どうせ、NPCは後から湧いてくる。何を悩む必要があるのか。
一線だ。一線を未だ超えてないから思い切れないのだ。その一線さえ超えてしまえば後は自分の想像した通りに進める。祥君のようになれる。その一線を今度の依頼PKで手に入れるのだ。
私はガズナに了承の返事をし、彼女と別れログアウトした。
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