第188話 黄金気を修得した新米領主の私は久しぶりに第1階層を目的も無くぶらつく
アクィナスも私の気持ちを分かってくれないのか…
文の片腕であるアクィナスは私の気持ちも分からず正論ばかり、武の片腕であるイヴァンは行方不明…
なんだか何もかもが馬鹿らしくなってきた…
こんな気持ちで領地経営を続けても意味はあるんだろうか。たかがゲームにすぎない盤面上の環境を良くすることに何の価値があるんだろうか。
そう思ってアクィナスを見るとこいつ私の追従しかしないくせに肝心なところで私の気持ちを裏切る。
追従するなら私が死ぬまで追従しろ。甘言ばかり私に言ってこい。どうにもならない正論にどんな意味がある。
「分かってるって、その程度のこと。冗談で言ってみただけだよ。本気にしないで」
無理やり言葉を紡ぎ、不自然な笑顔を貼り付けなんとか声を絞り出した。
これ以上、アクィナスといても彼女を見当違いに恨んでしまうだけだ。
「ところで今日は疲れちゃったからもう帰るね」
私はそれだけ言い残すとアクィナスの別れの言葉も聞かず第一階層に転移した。
◇◆◇
本当は直接、ログアウトしたかったが、今、ログアウトしたらそのまま眠ってしまう。そうして結論を先延ばしにする姿が予想できたから私はわざわざ第1階層まで戻って街をぶらついている。散歩が精神によい影響を与えるという記事を昔読んだのも影響しているだろう。ここのところ毎日、隣に誰かいたから一人になって考えてみるのもいいかもと思ったのも事実だ。
久しぶりの第1階層の夜の街並みだ。しかし、実際のところ現実世界の福天市の街並みを正確にトレースしただけの存在にすぎない。ところどころ、転移ポイントがあったり、NPCが歩いている以外は特に目新しいところもない。
このあたりのモンスターは雑魚ばかりで遭遇したところで瞬殺できる。その事実が余計に緊張感をなくす。
漫然と歩いてはみるがいいアイデアなど浮かんでこない。やはり、散歩すればいいアイデアが浮かぶなどという都合のいい展開にはならないか。
そろそろログアウトしようかと考えたころ、ふと、後ろから尾行されている気配を感じる。
私を尾行したところでなんらの価値もない無能領主なのに…
とはいえ、不愉快だ。まわりかどに入るとさっと尾行者の死角に入り、追ってきたところへ黄金気で強化された蹴りを放つ。
すると尾行者は私の蹴りを大きく跳躍することで回避し、私に正面に立った。
「お久しぶりです。真澄様」
尾行者は私が蹴りを入れたことへは文句も言わず普通に挨拶してきた。ガズナだった。祥君の奴隷兼情報屋の…
「ようやく依頼PKの詳細が決まったのでお伝えにあがりました」
読んで頂きありがとうございました。明日は休みですがなんとか投稿を頑張りたいと思ってます。
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