第186話 黄金気を修得した新米領主の私はガリポリ領主館で絶体絶命の危機の中から疑問点を見出す。
「まあ、ワシはガリポリ領がどうなったところで構わんのだ。問題はワシのダーダネルス領だ。世界の条理があるため、いくら傀儡でもお前の署名が必要な場面も出てくる。再度の任官が必要なためここで決めても仕方が無い。まあ、今日のところは帰ってやろう。無能領主と違ってワシがダーダネルスを離れるとそれだけで必ず何か問題が起きる。全く休みもろくに取れん…今日も休みを利用してわざわざやって来たのだ。次に会った時、お前をダーダネルス領主の座から引きずり下ろす。それまでにダーダネルス領主の位を自主的に黒佐賀王に返還するのだ。よいな!」
そう、言い放つとカンザスは私からの言い分を聞こうともせず、席を立った。
「ああっ、エミリー・アブストラクト・エクシードは置いていけ。彼女の存在は役に立つ。今も無能な領主の評判を少しでも上げるべく大要塞マムルークで軍事教練を行なっている。全く健気なものだ…剣王の存在はプレスビテリアン帝国に対して良い脅威になり、マムルークの兵の士気も高い。あれはお前には過ぎた存在だ」
私達を一瞥することもなくドアに向かってそう捨て台詞を残すとカンザスは領主室から去っていった。
そうか、エミリー。最近、連絡を取ってないからダーダネルス領で自由を満喫してるのかと思ったらそんなことをしてくれていたのか。私の知らないところで私の助けになっていたとは…流石、親友。今度、改めてお礼を言わねば。
「嵐のような人でしたね…」
カンザスが完全に見えなくなったのを確認してアクィナスが感想を言うと私の中で今までの緊張が一気に抜けた。
「そうだね。というか本当に疲れたよ。ところでアクィナス。あの、世界の条理に反するから私の署名が必要ってのはどういう意味か分かる?」
「領主館の中の書類や領地の中でなら代理サインでも通りますがたぶん、国境線を変更するなど大掛かりな約束や契約を行なうときは契約の神を仲介して契約するので代理では通用しないという意味なんだと思います。そんな大掛かりな契約は年に数回も行いませんが、契約の神に対し偽証や偽造、契約の不履行などを行なうと神の裁きを頂くため絶対に不正ができないのです。そもそも契約の神の前でそのような発想を行なうことすら危険なのです。たとえ、契約の神の前で外形的に完全な不正を行なっても心にやましいところがあればすぐに契約の神は指摘され罰を与えてくれます。契約の神を仲介とした契約はそれほど神聖視されているものなのです」
要するに心にやましいところがある限り契約の神を仲介とする契約はできないということか。あれほど、好き放題言ったが契約の神の契約がある限りは私を領主の座から引きずり下ろすことはできないから自発的に辞めるようしむけたのか。
「それとアクィナス。カンザスからの申し送りが私に届いてなかったのは気になる。どこで私宛ての申し送り状がストップしたのか調べられるかな?」
「その必要はありませんよ。あれは私がストップさせておきました」
私達が声のしたほうを振り向くとネブラスカが悠然と立っていた。
読んで頂きありがとうございました。なんとか投稿できました。明日の投稿も5割ぐらいできてるので大丈夫でしょう。頑張ります。
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