第181話 黄金気を修得した新米領主の私は全力ダッシュでガリポリ領主館に向かう
翌日、私は放課後、もはや誰とも口すら聞かず大急ぎで家に帰りログインした。もはや、軽度のログイン中毒だと自覚している。しかし、急がねばならない。どうせガリポリ領に入ればまた何か事件に巻き込まれ時間が足りなくなってくるのだ。だとすれば少しでも急いだほうがいい。
ログインし、足早にガリポリ領主館に続く坂道を登る。早く、早く。時間が短縮できるとしたらログインからガリポリ領に到着する時間ぐらいだろう。自然と白気を身に纏い早歩きから駆け足に変わっていく。そういえば、現実世界の私はベッドで寝ており肉体的疲労など感じる訳がないのだ。感じるのは精神的疲労だけだ。
私は駆け足から戦闘時の全力疾走に切り替え、最高速度でガリポリ領主館を目指す。
流石に戦闘時の最高速度で走ればあっという間に領主館に着く。到着したが私のアバターは息切れ一つ起こしていない。目減りしたのは全力疾走したから疲れているはずという精神的負担だけだ。
なんとはなしに行なったがこれはいいトレーニングになるのでは。今度から独りの時の移動は全て全力疾走に変えよう。セカンドワールドオンラインの中では肉体的疲労は存在せず、精神的疲労だけが問題になってくる。実際、昨日ログアウトした時も肉体はまるで疲れていないのに精神的疲労だけでめまいがした。精神にかかる負担を小さくすれば継続戦闘能力も上がるはずだし、実際の戦闘でも役に立つはずだ。
しかし、心のあり方というのは何度考えても不思議だ。肉体の限界というものは確かにあるが精神の限界なんていうものは存在しないはずだ。睡眠中を別とすれば心というものは365日常に何かを考え続け、休む間がない。休憩中とて何かを考え続け、本来、疲労するということは起こりえないはずだ。しかし、その一方で精神の限界は確かにあると考えることもできる。苦痛や苦悩、ストレスなどで心が処理限界を起こせば自殺や自傷、軽いものなら体調不良を起こす。
昔、気疲れで死ぬということはありえない、よって精神の限界などいうものは存在しないという記事を読んで妙に納得したもんだが今では気疲れで死ぬ、正確に言えば、気疲れから逃げ出したくて自殺したり、自傷したりすることは十分にあるよなと思いか直してきた。
そんなことを考えていたらあっという間に2、3分が過ぎていた。せっかく早くに到着したのにコレでは意味がない。
もはや、ガリポリ領主館を見ただけで動悸が早くなる。いつまでも現実逃避をしてられない。頑張らねば。私は意を決してドアを開けた。
「お疲れ様です、春日井領主」
いつもの受付の男性に挨拶するとネブラスカとイヴァン、アクィナスの現在位置を尋ねる。
そういえば、今日はまだアクィナスと連絡を取っていない。エミリーに至っては昨日から連絡を取っていないな。誇り高い彼女に密偵のような真似をさせて、その報告すら聞かないとはダメ領主街道をまっすぐ進んでる気がする。後で連絡しなくては。
読んで頂きありがとうございました。明日の投稿も頑張ります。もしかしたら遅くなるかもです。
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